中村憲剛さん、自身のドキュメンタリー映画の全国30館規模上映は大きな財産!ヨコハマ・フットボール映画祭2022

村井前Jリーグチェアマンとトークショー!
6月4・5日の二日間、横浜市神奈川区のかなっくホールでヨコハマ・フットボール映画祭2022が開催されました。
初日の4日(土)には、川崎フロンターレ一筋18年、チームを優勝に導き、地域に必要不可欠な存在に引き上げたJリーグ稀代のバンディエラ中村憲剛さんが自身の18年間を描いたドキュメンタリー映画『ONE FOUR KENGO THE MOVIE 憲剛とフロンターレ 偶然を必然に変えた、18年の物語』の上映後イベントに登壇。前Jリーグチェアマン村井満さんとともにトークショーを実施しました。
この映画は、観客も記者もほとんどいないJ2クラブの練習に参加した大学生が、Jリーグを代表する選手に成長し、その引退までの2か月間に密着した物語。昨年11月に川崎市内の2館で上映をスタートし、今年の2月11日(金)からは全国のイオンシネマで上映。最終的には全国30館規模の拡大上映に至りました。これには中村さんも「自分にとって大きな財産だった」と喜びを語りました。
上映拡大の背景には、本作が中村憲剛さんの引退記念ムービーというだけではなく、Jリーグの理念に共感し、川崎の街を未来永劫豊かにする、人々を笑顔にするという目的に向かって取り組む川崎フロンターレの様々な関係者、サポーターの姿が描かれていることがあげられるでしょう。まさに、Jリーグの目指すべき未来を映す、日本の全サッカー関係者必見ドキュメンタリーとなっているのです。
トークイベントでは、引退から1年半、様々な活動を通じてサッカーの魅力を発信している中村さんと、昨年までJリーグの先頭に立って引っ張られた村井さんが、本作から感じていることや日本サッカー界への熱い想いを語りました。
映画から中村憲剛さんが感じたこととは?
村井満さん(以下、村井さん)
Jリーグは今シーズンで30周年を迎えました。地域密着を標榜してスタートした中で、改めてこの映画を観て憲剛さんはどんなことを感じていらっしゃいますか?
中村憲剛さん(以下、中村さん)
この映画でも言っているんですけど、最初は(プロサッカー選手は)ボールさえ蹴っていればいいと思っていました。
そういうことから考えると、18年間自分がプレーヤーとしてやってきた中で、地域の皆さんと繋がりながら、自分が誰かの何かになれるんじゃないか、と。
地域貢献活動をしながら勝ったり負けたり優勝したりっていう中で、地域に自分たちが根ざすことで地域の皆さんにどれだけパワーだったり元気・勇気だったり、夢だったりを与えられる存在で居られるだっていうのを、僕自身が体感できた。それを(この映画で)映像に残していただいた。

映画の公開は自身にとっても「大きな財産だった」と語る中村憲剛さん
Jリーグが理念として掲げている百年構想の地域密着を自分たちが体現できたことを示せたという意味では、すごく僕の中では意義があって。
それを川崎がいいから終わりじゃなくて、色々な地域の方にも観ていただくこともできたので、それはすごく自分にとっては大きな財産だったと思います。
村井さん
映画の中でも「サッカー選手ってイイ車を買って、イイものを食べて、家でも建てて、それがサッカー選手だと思っていた」と。そういう考え方自体を変えてくれたのがフロンターレ?
中村さん
フロンターレでしたね。フロンターレの当時の立ち位置と言った方が正しいかもしれないです。
もし、僕が今のフロンターレのようにチケットも完売する人気クラブの新人選手だったら、ひょっとしたらそういう考えにならなかったかもしれない。自分たちから向かっていかないと、等々力(※川崎フロンターレのホームスタジアム)に足を運んでいただけない状況だったので、それは大きかったです。
村井さん
この映画を最初に観た時にこの映画をJリーグ全クラブの社長に観てもらいたいと思ったんです。要は言い訳が出来ないわけですよね。フロンターレがここまで愚直にやって地域密着ができるんだったら、もっとできるクラブも沢山ある。
試写会イベントの時に「全国で封切りしようよ」って私が言っちゃって。実際に全国ロードショーで30館ぐらい上映されたわけですけど、その手応え、反響はいかがでしたか?
中村さん
反響は本当にすごくて。実際にご覧になって映画館に足を運んでくださった皆さんのおかげでもあるんですけど、本当にすごい反響でした。
「自分の地域で観れないから何とかしてください」というメッセージが届いたり。本当に川崎の方だけではなく、他の地域の方、サポーターの方も興味を示していただいているのは凄く嬉しかったですし、勇気になりました。
憲剛さんも泣き虫ですか?(村井さん)
村井さん
今日、私は一番後ろの方で映画を拝見させていただいていたんですけど、映画の途中でもすすり泣く声が聞こえてきて、意外と憲剛さんも泣き虫ですか?
中村さん
作品の中でも何回も泣いているので。どっちかというと、情に脆い…。
村井さん
この映画はすごく丁寧に作られていてインタビューも繰り返して、色んな素材が使われています。今だから話せる制作エピソードはありますか?
中村さん
ドキュメンタリーなので、僕自身は特に演じたわけではなくて、本当に素のままですね。
クラブが素材として撮っていたものを監督、スタッフの皆さんが本当に愛を込めて作っていただいて。「こういう見え方をするんだ」というのは色んなシーンで感じていて。
村井さん
ロッカールームで「引退します」と伝えるシーンも、鬼木さん(※川崎フロンターレ鬼木監督)が泣いて、悠(※川崎フロンターレ小林悠選手)も最初から泣いていて、なかなか見られないシーンも沢山ありました。
中村さん
あのシーンも本当はカメラを入れない場所なんだけど、僕自身が引退するというのをスタッフに告げていましたし、入ってもらって。
だから僕自身の目線では見れないところをカメラが追ってくれてたので、正直僕も泣いて話してたので、みんなを見れていなかったんです。
改めて映画で観て、あの選手ああいうリアクションをしてたんだとか、呆然としている若い子たちの顔が印象的で、色んな顔が見えたなと。
今年カタールで開催されるワールドカップについて
村井さん
そういう選手たちが今、日本代表として今年のワールドカップの主力メンバーに結構川崎から選出されています。ワールドカップイヤーなんですけど、川崎の後輩たち、もしくは日本代表のワールドカップに向けてどんな意見を持っていますか?
中村さん
永嗣(※元川崎フロンターレ、日本代表GK川島永嗣選手)だったり、元々いた選手も含めるとかなり日本代表には自分と関わった選手が多いので。逆に、世界を相手にフロンターレで培ってきたものがどれだけ出せるのかなっていうのは1ファンとしてもそうですし、先輩の一人としても非常に興味があります。
あとは今回予選リーグの組み合わせが結構厳しいと思うんですけど、むしろ逆に大きなチャンスだと思っています。それは日本サッカーのスタイルをいかにして作っていくべきかがある程度見える。本当にもう100%思いっきりぶつかってほしい。そこで見えてくるものがこの後出てくると、そこに彼らがどう携わるかが非常に楽しみです。
村井さん
私のJリーグチェアマン在任期間が2014年から2021年までで、この間、川崎が苦しい時期でもあって、それから一気に常勝軍団に変わるプロセスでした。
憲剛さんは川崎を育てたように、今回Jリーグ全体のことを育てる側になりましたね。劇中で僕の「まるでチェアマンのように一人でやっているのが憲剛さんで」というコメントもありますが、僕のところに来て、「何をやっているんですか村井さん!何もやらないで!」と突っ込んできたのが憲剛さんです。これから日本サッカーを影のチェアマンとしてどのように?
中村さん
そのエピソードの後に、なかなか言い難いです(笑)
とにかく真摯に日本サッカーがどうなったら良くなっていくかをこれまでプレーヤーとしてやっていましたけど、引退してちょうど2年目になって、特任理事という役職も拝命しまして。
自分がいた世界は本当に狭かったなって改めて感じています。当然なんですけど、プロ選手は練習場とスタジアムと家の往復みたいなものですから。外の世界はなかなか見られないし、そういう意味でいうと、今自分がこの1年半ぐらいですかね。いろんな経験を外の世界でさせてもらっているので、本当にワクワク、楽しみで。
本当に多くの方が日本サッカーのことを真剣に考えているなというのをJリーグもそうですし、日本サッカー協会もそうだし、メディアの皆さんもそうですけど、本当にいっぱいいるので。もちろん、サポーターの皆さんだったり、サッカーが大好きな人だったり、そういう皆さんと共にみんなで日本サッカーをどうやって良くしていくかを今度は違う立場で、全力でやっていきたいなと思っています。
村井さん
憲剛さんざっくりと今、どんな生活ですか?解説も引っ張りだこですよね?(笑)
中村さん
そうですね。
僕自身も何を中心にして生活しているのか、若干よく分からないようなスタイル。だから、本当に定職がないんで。
村井さん
私と一緒だ。
中村さん
(僕は)失業はしてないですよ。
(会場笑い)
この後も、お二人の楽しいトークが展開され、会場からの質問にも中村さんが自身の経験を語りました。
Q&Aコーナーでは学生にエール!
質問:
今大学1年生で大学サッカーをやっています。一番下のカテゴリーでスタートしているのですが、トップチームで試合に出て活躍するにはどうすれば良いでしょうか?
中村さん
僕も中央大学に入って、1年目は一番下のチームからスタートしました。僕自身は一番下でも仕方がないと思っていた人間なので、むしろここから自分が何をやってもプラスになると思っていた。ただ、やっぱり闇雲に目標もなく頑張るのは進歩するんですけども、時間がかかります。
当時自分がやったのは、まず自分を分析すること。中村憲剛という選手が中央大学のサッカー部の中でレギュラーになるためには、何ができてて何ができてないか。ちゃんと分析してできないこと、やれないことを受け入れる。できないから、恥ずかしいから隠すとかではなくて、ちゃんと受け止めて、それをちゃんと克服できるように自分のトレーニングをする。
あとは周りとのコミュニケーションを意識していました。僕は中盤のミッドフィルダーの選手なので、周りの選手がより良くなってくれれば、自分の価値が高まると考えたから、“中村憲剛と一緒にやるといいことあるよ”って思わせるように周りの選手とはずっとコミュニケーションを取っていました。
そういうところからほんのちょっとずつ信頼を勝ち取って、自然とチームが上がっていった。
結構苦しいこともいっぱいあるけど、やっぱり自分で基準を高く設定することで望む自分になるんじゃないかなと思います。頑張ってください!
最後に、村井さんには感謝の花束、ヨコハマ・フットボール映画祭YFFFアワード2022ベストプレーヤー賞に輝いた中村憲剛さんには、映画祭から賞状と花束が贈呈されると会場から大きな拍手が送られました!
中村さん
嬉しいです。まさか引退して賞をもらえると思っていなかったので本当にありがとうございます。本当にこれも皆さんのお陰だと思います。皆さんの受賞だと思います。ありがとうございました!
ヨコハマ・フットボール映画祭2022
日程
2022年6月4日(土)~6月10日(金)
会場
4日~5日(終了)
かなっくホール 横浜市神奈川区東神奈川1丁目10−1
6日~10日(開催中)
シネマ・ジャック&ベティ 横浜市中区若葉町3丁目51
HP:https://yfff.org/yfff2022
ツイッター:http://twitter.com/yffforg
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