「監督は、一番最初の観客です」フランス流の映画撮影演出術に迫る1週間ワークショップに密着!

フランス流の映画撮影演出術

海外の演出術を学ぶ

ミニシアター、映画好きのためのオンライン・コミュニティ「ミニシアタークラブ」より、東京藝術大学大学院映画学科で実施された演出ワークショップの密着取材レポートが到着!さらに、今回のワークショップについて映像研究科映画専攻の諏訪敦彦教授(映画監督)のインタビューも解禁。

11月下旬、東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻で行われたワークショップ(以下WS)。フランスの名門La Fémis (ラ・フェミス)国立高等映像音響芸術学校の元講師、ブリス・コヴァン氏が来日し、監督志望の生徒たちを直接指導する貴重な機会を得ることができた。

元々、東京藝術大学大学院の映画専攻はフェミスをお手本に創設され、その時から交流が続いている。コロナ禍で一時途切れたが、コヴァン氏、久しぶりの来日とのこと。

フランス流の映画撮影演出術

諏訪監督とブリス・コヴァン氏

1週間のカリキュラム、WSの概要

▼1週間全体のスケジュール
①1日目(約4時間弱):演出についての講義(座学)
②2日目〜5日目:4人の監督チームにプロの俳優が入って、実際に撮影をしながらのWSを実施。
オリジナルで作成されたあるワンシーンの台本が2種類用意され、監督は自由に選ぶことができる。
(1日につき1つの撮影WSが行われ合計4つ実施)

① 1日目講義を聞いて
(※膨大な情報量があり全てをお伝えすることはできないが、取材で特に印象に残ったこと)

・監督と俳優との関係性を自分(監督)なりに見出すことが大切

・俳優とのコミュニケーションとカメラフレーミング等の技術的なことは最初は分ける。まずは、俳優中心に。(撮影中でも、カットがかかったらモニターを見るのではなく、まず俳優のところへいこう。)

・俳優と会う前の準備は大切で、登場人物・キャラクター造形を綿密に、そしてシーンの始まりと終わりで、どうゆう効果を得られるのがベストか、このシーンの前には一体どんなことがあったのかもよく考えておくことが大切。

・映画は小説と違って文字で説明ができないから、あらゆることを駆使して表現。俳優のボディランゲージ、服装、ヘアスタイル、小道具使えるものはなんでも試してみる。

・音楽に例えると、監督は指揮者、俳優は楽器(奏者)。監督は楽器は使えないが、その音を聞いて全体を調律していく。同じ楽譜(脚本)でも指揮者が違えば全く違う音楽になる。「こうゆう演技をして!」と具体的に指示するのではなく、例えば、「このキャラクターはこうゆう人だとしたら、どうするかな?」と、俳優にも考えさせて、色々な演技を引き出すことが大切。

・注意深く俳優の演技を観察しましょう。

・撮影はいい素材をできるだけ集める場所。Lab(実験室)だからできるだけ様々なチャレンジを俳優と共同で創造していき、編集で紡いでいく。編集での自由度が高まる。

・演出における6つの感情を意識する。

など、実にさまざまな技術やブリス氏の哲学が語られた。

フランス流の映画撮影演出術

また講義中にある生徒から「1テイク、2テイクと色々なバージョンを撮影していくとブリスさんがおっしゃいましたが、往々にして結局一番最初に撮影したものが良かった、ということが多くあるのですがそれについては?」と質問があがった。

それについて、諏訪監督は、日本とフランスの撮影状況の差を加味しながら「もしかしたら、テイクを重ねていくと、どんどん状況が整理されていってどんどんつまんなくなっていくということがあるからかもしれない。今回はブリス氏のいう6つの感情(「喜び」「怒り」「悲しみ」「愛情」「恐怖」「嫌悪」)をベースに、テイクごとにそれぞれの要素を加えていくことで複雑で重層的なテイクに発展してゆくかもしれない」と分析した。

また、ブリス氏が再三WS中に言っていたことは「監督は、一番最初の観客です。」と言う言葉。「監督は俳優の演技、スタッフワークなど様々なことに気を配りながらも、毎回、客観的にその撮影シーンを判断しなくてはいけない。難しいことですけどね。」と繰り返し監督らに伝えた。

初日の学びの主なポイント
・俳優と会う前に監督がすべき準備
・登場人物のキャラクター造形、シーンの分析
・監督として俳優との関係性の重要さ
・各セッションでのポイント、順序(本読み、ブロッキング、リハ、本番)
・6つの感情

2日目の撮影実習
撮影実習の流れは、午前中に監督から俳優へのブリーフィングと本読み、そして実際の撮影場所に行って、<ブロッキング>というカメラが入らない状態での様々なパターンをトライ。

午後は、カメラがセットされてからリハーサル後、撮影。

フランス流の映画撮影演出術

夕方までに撮影し、すぐその後ラッシュを見ながら監督自身の感想と、ブリス氏、諏訪監督から講評という流れ。

朝から教室で監督からのブリーフィング。俳優と一緒にキャラクターの設計、シーンをどう見せるか徹底的にディスカッション。そののち、本読みに移行。

面白かったのは、色々な可能性を引き出すために、俳優が寄り添ったり、背中合わせだったり、手を繋ぎながらと変化をつけるだけで、同じ本読みでも、俳優から色々なキャラクターが生まれ出したことだ。

フランス流の映画撮影演出術

次に、「ブロッキング」。このWSで最も多く出てくる用語の一つだ。

日本の映画業界で言うと「段取り」に近いものかもしれないが、カメラをまだ入れずに、監督と俳優が様々な演技、シーン構築を試す大切な時間だ。

実習中、生徒が、カットをかけて撮り終えると、必ずブリス氏は「じゃあ、他のアプローチを試してみよう。何が考えられる?」と監督に投げかけ、監督がしばし沈黙してしまうシーンもあった。

日本においては、様々に実験的にいろんなテイクを取るという文化があまりなく、俳優も監督が想定する唯一のイメージを追求し、監督もその1つのイメージを目指す。

どちらのやり方が正しいか、と言うことはできないが、往々にして撮影や編集に日本よりも時間をかけられると思われるフランスでは、俳優を「センターオブフィルム」におき、実にクリエイティブな思考実験を撮影現場で行う余裕が少しあるように感じた。

また、カットがかかるとすぐカメラマンとモニターを見ながら話してしまう生徒に、たびたび、「まずは俳優に対して今の演技はどうだったか?話そう。俳優は監督に向き合ってもらえないと非常に不安になってしまい信頼感がどんどん薄れてしまうよ」と何度も何度も監督に言うと次第に監督もまずは俳優の演技を観察しディレクションしていくことに集中していった。

ブリス氏の技術は書籍などでなかなか体系化・一般化しずらく、このWSで体験できた人は、今後、それを使うにしろ使わないにしろ、貴重な体験ができたのではないだろうか?

2週にわたって、精力的に日本でWSを行うブリス氏に感想を聞くと、「みんな、どんどん吸収して面白いアイディアを提案してくる監督もいて非常に面白い」とのこと。また来年もできたら実施したいと言ってました。

最後に、このWSを監修した諏訪監督にインタビュー取材を行いましたのでご覧ください。

諏訪監督インタビュー:https://youtu.be/4Pudi58Ztg0

ミニシアタークラブ

新型コロナウィルスの感染拡大に伴い変化を余儀なくされている映画業界において、全国のミニシアター文化の盛り上げを、映画を届ける側と観客の相互コミュニケーションによって推進するオンラインコミュニティとして設立された。

映画に携わる様々な人たちによるリアルな現場の話題を提供し、ミニシアター支配人によるおすすめ作品トーク、ミニシアターの歴史講座、国内外映画祭事情・買付け、邦画製作秘話、配給宣伝、ポスターデザイントークなどを取り上げている。

HP:https://basic.motion-gallery.net/community/minitheater/

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