『アジア三面鏡2018:Journey』記者会見レポート

10月26日(金)第31回東京国際映画祭にて『アジア三面鏡2018:Journey』記者会見が行われ、オムニバス作品『海』『碧朱』『第三の変数』の監督、キャストが登壇し、予定の30分を大幅に超えて、およそ1時間たっぷりと語っていただきました。

司会のフジテレビ・笠井アナウンサーの呼び込みで、ゲストが登場しました。

母娘の複雑な関係が旅の中で変化していく『海』

『海』(左から)デグナー監督、母親役のチェン・ジンさん、娘役のゴン・チェさん

司会(笠井アナウンサー):人間模様が浮き彫りになる作品『海』でメガホンをとったデグナー監督です。母親役のチェン・ジンさん、娘役のゴン・チェさんです。

デグナー監督:中国からきたデグナーです。三本のうち最初の作品『海』を監督しました。国際交流基金と東京国際映画祭の皆さんに感謝したいと思います。このような素晴らしいチャンスを与えてくださって本当にありがとうございます。東京国際映画際には、ひとつ前の作品『告別』が選ばれたのですが、その時は来日ができず今回が初めての参加となります。

チェン・ジンさん:『海』で母親役を演じたチェン・ジンです。この場に参加できて嬉しく思います。

ゴン・チェさんデグナー監督チェン・ジンさんと3人で中国から来ました。今回この作品に参加できたことを嬉しく思いますし、東京国際映画祭に参加できたことが本当に嬉しいです。

鉄道整備事業に携わる日本人男性の体験を描いた物語『碧朱』

『碧朱』(左から)松永大司監督、主演の鈴木役の長谷川博己さん、ヒロイン役のナンダーミャッアウンさん

司会:続いてミャンマーの首都ヤンゴンを舞台に、鉄道整備事業に携わる日本人男性の体験を描いた物語。街の進化と喪失を背景に彼が抱く心の機微を色彩豊かな映像で描いた作品『碧朱』から松永大司監督、主演の鈴木役を演じた長谷川博己さん、さらにヒロイン・スースー役を演じた現役女子大生の新人女優ナンダーミャッアウンさんです。

『碧朱』松永大司監督

松永大司監督:『碧朱』を監督した松永です。日本で開催される映画祭で、日本人の監督としてこの作品を撮れたことを本当に光栄に思います。長谷川さんナンダーミャッアウンさんと共に、ミャンマーで今しか撮れない作品を撮れたと思います。この後、ワールドプレミア上映も控えていますが、どういう反応をいただけるか楽しみです。このような機会をいただき本当にありがとうございました。

『碧朱』日本から派遣され鉄道整備事業に携わる商社マン役の長谷川博己さん

長谷川博己さん:長谷川博己です。ミャンマーで短い期間でしたが貴重な体験ができました。映画自体は、分かりやすい作品ではないですが、色っぽい作品になったのかなと思います。こうして3作品並べて観ると雰囲気も違いますし、こういう風になるんだと色々感じましたが、それぞれが共感を得ることができる作品だと思います。この場にいることができて嬉しいです。

『碧朱』スースー役、新人女優のナンダーミャッアウンさん

ナンダーミャッアウンさん:この作品に参加できてとても光栄です。このような機会をいただきありがとうございます。

司会:女優さんとご紹介してよろしいでしょうか。

ナンダーミャッアウンさん:わたしはプロの女優ではなく、本作ではじめて女優として演じさせていただきました。将来的にはプロの女優として活躍していきたいと思っています。

松永大司監督:そうなんだあ。

(会場笑い)

東京を訪れた夫婦と謎の民泊オーナーが織りなす不思議な旅『第三の変数』

『第三の変数』(左から)民泊のオーナー役のニコラス・サプットゥラさん、インドネシア人夫婦の妻セカール役のアグニ・プラティスタさん、夫エディ役のオカ・アンタラさん

司会:最後に、東京を訪れたインドネシア人夫婦が民泊のオーナーから倦怠期を迎えた夫婦へのアドバイスを受けるという独特のシュールな作品『第三の変数』からエドウィン監督、民泊のオーナーを演じ、他の2作品にも出演されているインドネシアの国民的俳優ニコラス・サプットゥラさん、夫婦で妻セカールを演じたインドネシアの人気女優アグニ・プラティスタさん、夫エディ役を演じた実力派俳優オカ・アンタラさんです。

エドウィン監督

エドウィン監督:インドネシアからきたエドウィンです。このプロジェクトに参加できたことがとても幸運で幸せに思います。そして色々なことを世界の他の地域の作り手さんと共有できたことを嬉しく思っています。

ニコラス・サプットゥラさんはインドネシアの国民的俳優

ニコラス・サプットゥラさん:こうして座っていることが栄誉であり、この映画祭に参加できたことが喜びです。そして、素晴らしい才能を持つ皆さんと今回ともに働くこと、アジアの他の国の方々と共同作業ができたこと、ここからまた何か起こるんじゃないかと期待しています。

インドネシアの人気女優、アグニ・プラティスタさん

アグニ・プラティスタさん:(日本語で)はじめましてアグニです。今回で東京に来るのが2回目になります。このプロジェクトに参加できたことをとても嬉しく思っています。そして日本の非常にプロフェッショナルな皆さんと仕事ができたので、その経験を踏まえてまた日本に来たいと思っています。観客の皆さんに楽しんで頂けたら幸いです。

実力派俳優、オカ・アンタラさん

オカ・アンタラさん:今回は才能あふれる皆さんの仕事ができ、素晴らしい経験でした。この作品には常に私が映画に取り組むときと同じ姿勢で取り組みました。朝早くから夜遅くまで尽力を尽くして撮りました。そんな作品を皆さんに観ていただけるということで、非常にワクワクしています。

司会:皆さんに伺います。このプロジェクト『アジア三面鏡』に参加しての感想をお聞かせください。

『海』デグナー監督

デグナー監督:まず、ここに座っていて必ず最初の発言者なので緊張しているのですが(笑)色々なことが起こり、色々な経験をさせていただいたので、一言二言では語り尽くせないものがあります。日本ととてもご縁があるのだと思います。私の一作目の長編『告別』が東京国際映画祭の「アジアの未来」部門で上映され、国際交流基金アジアセンター特別賞をいただきました。そして、私のチームを日本に呼んでいただき、色々な経験をさせていただきました。日本の文化や日本人について色々と知る機会を得ました。その時の体験で色々な出会いがあり、『告別』を観てくださった井関プロデューサーと伏見プロデューサーが「アジア三面鏡の監督の一人として撮ってみませんか?」と声をかけてくれました。すぐには回答できず熟考して、「是非、参加してみたい!」という形で受けました。
『海』は母と娘の旅行ですが、海外には行かず国内で撮影し、海へ向かう旅路です。この作品を制作、仕上げる段階で日本に来る機会がありました。そして、コーヒーを飲みながらお二人の監督と色々なお話をしました。そうすると共通点が沢山あり、友達のような感覚になりました。こういう作品を仕上げていく上で、とても良い雰囲気で皆さんと語り合えました。そして、初めて二人の日本人のプロデューサーとお仕事をしまして、中国で撮る時とは違う感覚を得ました。監督のクリエイティブな面と、自由な面をとても大切にして下さいました。そこがやりがいがある部分で、中国とはすこし違う部分だとも思いました。今回の総合テーマがJourney=“旅”ですが、旅についてはいつも感じていることがあります。撮影すること自体が旅のような感覚を感じているので、まさに旅をしているような感覚で撮影をしました。

母親役のチェン・ジンさん

チェン・ジンさん:とても緊張しています。昨日デグナー監督は白い服を着ていたんですね。私たちはそれを見てすごく緊張したんです。母と娘が父親を想うという所があって。わざわざ監督はそれを着たんだと思います。演じた母親役は娘と一緒にドライブをしていく中でいがみ合っていく。母と娘の間の肉親の憎しみというものもあり、いがみ合い自分の不満をさらけ出す中で、より母と娘の距離が近づいていき、お互いを分かり合えるようになるというストーリーで、そこを理解しながら演じました。このような機会を与えてくれたデグナー監督と一緒に演じてくれたゴン・チェさんに感謝したいと思います。

会見中に隣からスマホで撮影する一コマも

撮影期間が10日間しかなく、せっかくゴンさんとも仲良くなったと思ったら、もう撮影が終わりということで少し心残りはあります。撮影期間の短さもあり、演技で納得できていない部分もあり、もう少し時間があればと今となっては思いますが、出来上がった作品をみてこれで良かったんだとやすらぎを覚えました。撮影は終わりましたが、母と娘の感情は本当に親しい感情として残っていて、とても嬉しいことだと思います。このテーマで演じることができて、本当に光栄に思いました。

司会チェン・ジンさんは緊張されているとのことでしたが、お隣のゴン・チェさんはスマートフォンで撮影をしたり、様子が違うようですが、このプロジェクトに参加していかがでしょうか。

(会場笑い)

娘役のゴン・チェさん

ゴン・チェさん:東京国際映画祭とのご縁について少しお話させてください。実は私は13年前に東京国際映画祭に参加しています。その時、私はまだ大学生でした。昨夜はアフターパーティーに参加しましたが、またこの映画祭に参加できたけれども、本当に時間は早く過ぎるものだなと感じました。大学生から成長し、私は今こんな感じになりました。

今回この『海』で娘役を演じることができたことにとても感謝しています。13年の間に色々と経験し蓄積してきたことをこの作品でデグナー監督に引き出してもらったように感じます。特にデグナー監督の創作に対する思い入れ、そしてキャストに対する親しみのある細やかな気配りに感激しました。チェン・ジンさんと共演できたことも光栄で、今回は本当に得難い貴重な経験をできました。この気持ちを表現するならば、気持ちがとても“コーリング”です。日本の豚骨ラーメンで言うならスープのような気分です(笑)

実は他の2作品をまだ拝見していないのですが、きっと素晴らし作品に仕上がっていると思います。おそらく共通のテーマは“愛”だと思っています。普遍的なテーマなので、3本それぞれを楽しんで頂ければと思います。アジア三面鏡をじっくりお楽しみください。

司会:続いて『碧朱』チーム、松永監督お願いします。

『碧朱』松永監督

松永監督:まず第一弾が行定監督で、その日本を代表する監督のあとに、新人監督に近い僕にチャンスを与えてくれた東京国際映画祭国際交流基金の関係者の皆さんに本当に感謝しています。若い監督がこのようなプロジェクトで自由に撮るという試みは、映画祭のような場所じゃないと出来ないと僕は思っています。その中で、自分が何が出来るのか、色々と挑戦しました。このプロジェクトで何を得たかは、この先5年、10年、15年、20年と続いていった時に意味合いが見えてくるのではないかと思っています。当然監督は一作品ごとに評価されていくわけですが、僕自身はその点が線になり、5年後10年後の松永という監督の形を作ると思っています。本当に大きな時間でした。

立ち上げからデグナー監督エドウィン監督と話をして、自分とは違う価値観の中で物事をみている人たちと作ることは本当にワクワクしました。出来上がった作品以上のものが、大きな財産になっています。それを活かすのは、また次を作り、その次を作り、沢山の人に映画を届けることが出来た時に、あの時の『碧朱』が一つの大きな転機だったんじゃないかと思えるような作品になっていると思います。長谷川さんナンダーとやることも楽しかったし、出来上がってから一足先に中国、インドネシアの作品を観た時に僕には作れないなと思いました。映画監督って孤独なんですけど、横に座っている映画人とまたどこかの国で映画祭とかで会えた時に、一緒にお酒を飲んだり、映画の話をしたりすることが数少ない映画のご褒美だと思っていて、そうなれるようにまた努力したいと思います。本当に楽しい経験でした。

司会:行定監督にお褒めの言葉を頂いたそうですね。

松永監督:褒めてもらっちゃいました(笑)色々言って頂きましたが、エロいって言われました(笑)

司会:続いて、長谷川さんお願いします。
長谷川さん:僕は元々未開の地とか、旅に出ることがすごく好きで、このあとどうなるか分からない所に飛び込むのが凄く好きで、喜んでオファーを受けました。すごく得難い経験が出来たし、面白かったです。欲を言えば、3つの作品全部に少しでもいいから出たかったなと。エドウィン監督の作品でなぜだか最後に北村一輝さんが出演されていて、その役を俺でいいじゃん!って。

(会場爆笑)
長谷川さん:なんだよ!って、まあそんなこともありましたけど、すごく面白い作品がそろって、観たあとに色んなことを感じて、色んなことを話せるものになっていると思います。すごく良かったです。

司会:女子大生のナンダーミャッアウンさんとの共演はいかがでしたか?

長谷川さん:なんて言ったらいいでしょうね(苦笑)初めて演技されたということですが、一人の女優さんとして一緒に仕事をすることが出来ました。行定監督にも、色っぽい作品だねと(笑)

司会:それではナンダーミャッアウンさんお願いします。

ナンダーミャッアウンさん

ナンダーミャッアウンさん:撮影の前に、打合せの時間があったので松永監督、プロデューサー、それから大学とも相談して出演することができました。最初は緊張していましたが、皆さんの支えのおかげで無事に演技することができました。松永監督からは、撮影前に役の気持ちになるようにと指導してもらいました。私自身も大学で映画の監督を専攻しているので、この作品は監督を学ぶ機会でもありました。松永監督は丁寧に、とても優しく演技指導をしてくださいました。撮影期間に学校の試験もあり、試験のプレッシャーと撮影のプレッシャーが両方あって少し大変でした。映画の中でミシンを使って女性のドレスを縫うシーンがあったんですが、ミシンの使い方が分からず、三日間ほどミシンの使い方を学びました。撮影の時にも、ちょっと失敗しちゃいました。

私は監督の勉強をしていますが、今回の作品でチームワークの大切さを学びました。最初は有名な俳優さんを相手に緊張もしましたが、皆さんから温かく支えられて感謝しています。

司会:ありがとうございました!『碧朱』のお三方でした。そしてお待たせしました。『第三の変数』からまずはエドウィン監督お願いします。

『第三の変数』エドウィン監督

エドウィン監督:短編映画は今までも撮ってきましたが、短編は常に色々な挑戦を伴います。そして、学びの場でもあります。映画作りという職人技、モノ作りに向き合う機会です。通常であればいつもの馴染みのクルーで、熟知した場所で撮影します。今回はそうのようないわゆる居心地のいい場所から飛び出して、違う場に身を置いて、日本のクルーとでした。ただ、俳優は私と一緒に色々な果敢な挑戦をしてくれる俳優を連れてきて、違う場に彼らも置いて、実験し共に学んだ機会でした。

東京を舞台にしていて、俳優陣と脚本以外は日本のクルーでした。共に制作するプロセスを経験できたこと、コラボレーションの機会があったのは本当に恵まれていました。さらにもう一つ、日本人の撮影監督・芦澤明子さんに参画いただいたことが非常に大きな意味を持ちました。脚本に関しても色々と考えを膨らませて、私たちの情熱でありエネルギーを共に分かち合ったんです。
私のチームのみんなと今日この場所に居ることを誇りに思い、嬉しく思っています。

司会:大変申し訳ないのですが、ワールドプレミアの時間が近づいてまいりました。ちょっとだけテンポアップしてもらえると嬉しいです、ごめんなさい。続いてはニコラス・サプットゥラさんお願いします。

『第三の変数』では民泊のオーナー、他の2作品にも出演しているニコラス・サプットゥラさん

ニコラス・サプットゥラさん:フゥ……(笑)私が是非ここでお伝えしたいのは、いかに自分が恵まれたいたか、です。このチームに参画できた、そして私は各ロケーション、各監督と演じる機会がありました。映画の作り方には、文化背景が反映されます。それでもいわゆる“バイブ”、映画に込める“魂”、そして制作過程の秩序やプロセスはそれぞれの手法があり、俳優として様々な経験ができる特別な得難い機会でした。エドウィン監督の作品は、自分を居心地の良い場所から抜け出してチャレンジをするもの。同時に楽しく気張らずに演じる状況を作ってくれます。ただ、私にとってこれは本当に旅でした。様々な経験をすることができました。

司会:ありがとうございました。続きまして、アグニ・プラティスタさんお願いします。

『第三の変数』妻セカール役、アグニ・プラティスタさん

アグニ・プラティスタさん:このオファーを受けたのは、監督が私のことを信じてくれている、私にこの仕事を乗り切る力があると。その信頼関係が大きかったです。だからこのオファーを受けて、参加することができて、とてもラッキーだったk良かったなと思っています。他のパートも含め、全編を観ることも楽しみです。自分たちのパートはとても楽しく作ることが出来ました。

司会:続いてオカ・アンタラさんです。

(右)『第三の変数』夫エディ役を演じた実力派俳優オカ・アンタラさん

オカ・アンタラさん:私はこれまでの15年ほどの俳優のキャリアの中で数多くの作品に参加してきましたが、短編映画は一本だけでした。今回短編に参加して非常に自分の欠点が目立ったなと。というのも、短編は短い時間、少ない登場シーンでストーリーを伝えなければならない。特に今回は倦怠感を抱えている夫婦の設定で、それをどう伝えるか。この映画では、どのように効果的に自分を有効活用するかを学びました。私のキャリアの中でこの作品はまさに来るべき時に来た経験でした。監督がこの作品に関して最初に言ってくれた言葉を覚えています。「肌を合わせるようなシーンって経験あります?」「ありますよ」「それは恥ずかしくなくできる方ですか?」「うーん、そうですね」「もう一人そこに男性が加わったらどう?」「良いんじゃないかな…」……。今回のテーマがいわゆる性的な接触、やらないといけないからやっているという義務感。それに対して、問いかけをしないということ。結婚なり、関係を長く維持させるためには、お互いを与え合う中で、形式的なセックスと思わず、タブーではなく日常的な会話としてそういう関係性も口にするべきではないかなというのがテーマだと思います。


監督、キャストの皆さんがたっぷりと今回の作品で感じたことを語ってくださり記者会見は幕を閉じました。

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