ベトナム映画の夕べ,写真

ベトナムアクション映画の興隆~ゴ・タイン・バンを中心に~

『ハイ・フォン』で素晴らしいアクションをみせるゴ・タイン・バン氏は仲間由紀恵さんの1学年上(笑)であることを先ずイメ―ジしてほしい。

ジョニー・グエンが武術指導するヴィクター・ヴー監督(『草原に黄色い花を見つける』監督)の『ソード・オブ・アサシン』はDVDで観れる。
ジョニー・グエンの兄であるチャーリー・グエン監督が2013年に撮った渾身のアクション映画『チョロンのストリート・チルドレンたち(Bui Doi Cho Lon)』は暴力シーンが検閲に引っかかり上映禁止となる。(※チョロン:サイゴンの西側にある中華街のこと)これがきっかけで、チャーリー・グエン氏が撮るアクション映画はリスクが高いという認識が広がってしまう(現在、YouTubeで観れる模様)。その後、チャーリー・グエン氏は『テオちゃん(Tèo Em)』『ホイにおまかせ』などコメディ路線にまい進し、アクション映画から身を引くことになり、しばらくベトナム映画におけるアクション映画が停滞する一因となった。

また、『The Rebel 反逆者』の敵役を演じたダスティン・グエン氏(役:シー)もアクション映画『ソード・ウォリアーズ 皇帝の剣闘士』を撮っている。彼は両親が南ベトナムの俳優で、ベトナムの国外に出た人達の系譜になるが、傑作として『伝説の男』が挙げられる。主人公のロン(名前の由来はブルース・リー)は(枯れ葉剤の影響で)知的障害を負った青年で、赤ちゃんの時にビンディン武道の指導者の女性に拾われて育ったという設定。その女性は母親になるわけだが、ロンの父親はブルース・リーだと嘘をつき、彼に武術を教え込む。母の死後、父を探しに旅に出るわけだが、また”人さらい”がでてきて(前編の勧善懲悪)、ロンは体が不自由な状態ながらアクションを行うストーリーだ。
また、作中のビンディン武道だが、ベトナム地方のビンディン省があらゆる格闘技のルーツとされる「ビンディン伝統武道」発祥の地といわれる場所であり、ローカルな所と武道が(作品に)結びついている。長らくアクションを撮っていなかったダスティン・グエン氏だが、昨年のテト(旧正月)にアクション・コメディを撮っている。主役は盲人の設定であり、どうやらダスティン監督は体の不自由な武術の達人が好きなようである。さらに、グエン・クワン・ズン氏の『超人X』も面白いし、ヴィクター・ヴー監督の『マン・オブ・スウィッチ』はDVDを発売しているが、結構彼らはヒットメーカーを撮っている。ゴ・タイン・バンの功績の一つは、アイドル4人組をデビューさせダンスを復活させたこと。『フェアリー・オブ・キングダム』(DVD発売済)はベトナムの昔話の「タム カム」が元ネタとなっているアクション・ファンタジーである。この作品が売れたポイントは、アイドルグループのメンバーが総出演で踊るダンスと主題歌が大ヒットしたことである。日本の80年代の様なダンスで、ベトナム航空のCMでも替え歌で踊られ波及した。
二つ目の功績は『仕立て屋』でいえば”アオザイ(アオヤイ)”とダンスをミックスさせたことだし、『ハイ・フォン』であれば”アオババ(長い裾をもたず、多くは黒いズボンと合わせる)”とアクションを結びつけている点であろう。

〇『ハイ・フォン』のあらすじ:取り立て屋のハイ・フォン(あだ名)はシングルマザーで一人娘のマイとベトナム南部に暮らしている。マイは母親の仕事柄から級友たちにいじめられ、母親が取り立て屋をやめることを願っている。カントーに出かけた時にマイは男たちに誘拐されてしまう。主演はゴ・タイン・バン氏、監督はレ・ヴァン・キエ氏(『やさしいあなた』)。大阪アジアン映画祭のプロデューサー曰く、ベトナム版ブルース・リーと評する。

【ハイ・フォン 予告編動画 OAFFより】

この『ハイ・フォン』が最近ベトナム興業収入第一位を記録した。18歳未満鑑賞禁止であるにもかかわらず、歴代興収第一位をとった。
面白いのは『妊娠妻を取り戻すカニ』のヒロイン(ニン・ズーン・ラン・ゴック<)は『仕立て屋』の主演の娘役(親役はゴ・タイン・バン)であり、仕立て屋の親子でベトナムの興収を競い合っている構図になっている。
【仕立て屋 予告編動画】

『ハイ・フォン』の功績は、ボビナム(ベトナム発祥の総合格闘技)と女性アクションの発展。『The Rebel 反逆者』もボビナムを意識した作りとなっている。『チョコレート・ファイター(タイ)』よりも更に女性アクションが発達したといえる。撮影で怪我をして大変な中での撮影でもあった。Studio68がメイキングを出しているので、そちらも参考に。

【チョコレート・ファイター 予告動画】

【ハイ・フォン メイキング Studio68より】

『ハイ・フォン』は『The Rebel 反逆者』以降のベトナムアクションの集大成であり、特徴は3点(1.ブルース・リー、2.人さらい、3.列車)。特に2と3はアクションの大道なのではないか。もう一つのポイントは『ハイ・フォン』も『パパと娘の7日間』も韓国のロッテとの共同制作であること。韓流がローカルB級映画にも進出したということ。さらに、第14回大阪アジアン映画祭でABCテレビ賞を受賞したインドネシアの『アルナとその好物』(エドウィン監督)はインドネシアのローカルフードをテーマにした映画だが、これも韓国のCJエンターテインメントが共同制作している。韓国の進出が目立つが、最近、松竹がベトナムにおける映画興行会社の株式を取得するなどの動きも見られている。
【パパと娘の7日間 予告動画 OAFFより】

【アルナとその好物 予告動画 OAFFより】

最後に付け加えたいのが、ゴ・タイン・バン氏は『ハイ・フォン』を最後のアクション映画出演と言っており、もうアクション映画に出ないと言っている。年齢の問題もあるとは思うが、後続が育たないからということが理由である。彼女が偉いのは、今、若手のベトナムのアクション女優を育てるワークショップを開いていることである。自分のノウハウをベトナムの若手女優に叩き込んでいる。『ハイ・フォン』後の新時代に、このワークショップでトレーニングを積んだ若手が主演のアクション映画に出るかもしれない。

最後に「新時代」について語りたい。アジアのアクションではあまりベトナムが表に出てこなかったが、オーストラリアのドキュメンタリーの制作者が、「アジアのアクション映画における女優の役割」というタイトルのドキュメンタリーを撮り始めており、取材先が香港、ベトナム、フィリピンとなっている。ベトナムでアクション女優と言えば取材対象は限られているから楽しみだ。ドキュメンタリーを撮る側も女性であり、ベトナムも『ハイ・フォン』をきっかけに新時代に変わり、アジアのアクション映画をめぐる研究対象も女性となっている。これが「新時代」と言えるのではないか。




 


関連記事

コメント

  • トラックバックは利用できません。

  • コメント (0)

  1. この記事へのコメントはありません。

   

CAPTCHA


『ハッピーアイランド』

注目映画

  1. 5月10日公開 映画『轢き逃げ 最高の最悪な日』 ■イントロダクション 30年来の夢であった…
  2. 5月24日公開 映画『空母いぶき』 ■イントロダクション 戦後、日本が経験したことのない24…
  3. 5月17日公開 映画『コンフィデンスマンJP』 ■イントロダクション “目に見えるものが真実と…
  4. 5月3日公開 映画『名探偵ピカチュウ』 ■イントロダクション 主人公は、見た目はカワイイけど、…
  5. 4月26日公開 映画『バースデー・ワンダーランド』 ■イントロダクション 日本を代表するアニメー…
  6. 4月19日公開 映画『キングダム』 ■イントロダクション 時は紀元前、中国春秋戦国時代を舞台に…
  7. 映画『チア男子!!』
    ■ 最新情報 ・横浜流星、中尾暢樹らブレイカーズメンバー全員が初日舞台に登場!映画『チア男子!!』…

ツイッター

Facebook





ページ上部へ戻る