ウクライナ映画 アトランティス ヴァレンチン・ヴァシャノヴィチ監督 アンドリー・リマルーク
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未来は何も決まっていない!
戦地ウクライナからのリマインド
映画『アトランティス』
第32回東京国際映画祭

第32回東京国際映画祭コンペティション部門
映画『アトランティス』(ウクライナ)
10月30日(水)記者会見
登壇者:ヴァレンチン・ヴァシャノヴィチ監督、主人公のセルヒー役 アンドリー・リマルークさん
司会:笠井信輔さん

―――― 司会:一言ずつご挨拶をお願いします。

ウクライナ映画 アトランティス ヴァレンチン・ヴァシャノヴィチ監督 アンドリー・リマルーク

ヴァレンチン・ヴァシャノヴィチ監督

ヴァレンチン・ヴァシャノヴィチ監督
今回このような作品を創りましたのは、ウクライナではまだ戦争が起こっている、続いていることを皆さんに知っていただく、リマインドするために創りました。

ウクライナ映画 アトランティス ヴァレンチン・ヴァシャノヴィチ監督 アンドリー・リマルーク

アンドリー・リマルークさん

アンドリー・リマルークさん
非常に興味深く撮影に参加させてもらいました。私自身がこの戦争に参加した経験者だからです。映画の出来は100%に近いものであると確信していますし、近未来を想定させるような出来上がりになったと思います。

―――― 司会:ウクライナの今を描いていてとても深刻な気持ちで受け止めました。ただ、今のウクライナをお伝えしたいのであれば、現代の設定にすることも出来たでしょうし、ドキュメンタリーにすることも出来たと思います。なぜ、あえて未来の設定にしたのでしょうか?

ヴァレンチン・ヴァシャノヴィチ監督
これまで撮られてきた多くの戦争映画は戦争が終わって10年から15年後に撮られたものが多いと思います。
私自身もシナリオの中で最初は今を舞台に作っていました。しかし、実際に撮ろうとすると政治的な問題、あるいは私たちに対する敵軍は悪い役割でなければいけないとかそういった制約ができてしまいます。私はそういうものをなるべく避けたかった。あえて近未来に場面を置くことで、敵が悪いものだとか、政治的な問題も排除する、それにより純粋に映画を撮りたかったのです。
そして、戦争によってどのような結果がもたらされるのかを描きたかったわけで、近未来を舞台に制作した事は正しい選択肢だったと今は思っています。

―――― 司会:アンドリーさんはオーディションで採用されたということですが、どういうコンセプトで選ばれたのでしょうか。

ウクライナ映画 アトランティス ヴァレンチン・ヴァシャノヴィチ監督 アンドリー・リマルーク

ヴァレンチン・ヴァシャノヴィチ監督
プロの俳優は使わない、それから戦地での実践経験がある人にすることが最重要でした。次に重要視したことは、戦争によって何か精神的なトラウマを受けた人、すなわちPTSDを抱えている人です。なぜなら、一般の俳優さんでは演じきれないと思っています。ですから、私は今回アンドリーを起用しまして、その仕上がりは映画をご覧いただいた皆さんに伝わっていると思います。

―――― 司会:初演技ということですが、ウクライナ戦争を含めて、どのような戦争体験をされてきたのでしょうか。お話出来る範囲でどのようなトラウマを抱えていらっしゃったのでしょうか。

アンドリー・リマルークさん
戦争は常に恐ろしいものです。
私は1年半もの間戦争に参加していました。そこで目にしてきたものは血、人々の死、爆発など様々なものを目の当たりにしてきました。ウクライナでの今回の戦争に参加した人達が抱えている問題、皆さんだいたいPTSDを抱えています。
この映画の中で、現在のウクライナ人が抱える問題、すなわち戦争に参加したウクライナ人が抱えるPTSDの問題を如実に示していると思います。
経験者の10%がアルコール依存症に陥ったり、7~8%が自殺で人生を終えてしまう、そういった統計上のデータがあります。

―――― 司会:全編ほぼワンシーン、ワンカットで撮っているとのことですが、演出意図としてどのような効果を期待したのでしょうか。
また、元々俳優さんではないと聞いて驚きましたが、相当ストレスのかかる撮影環境だったと思いますが、どのように乗り切られたのでしょうか。

ヴァレンチン・ヴァシャノヴィチ監督
ドキュメンタリー映画出身ですので、このような作品は挑戦的でした。
効果は、ワンシーンワンカットすなわち長回しによって大きなフレームワークで撮ることで、よりドラマチックな場面を再現したいと思いました。それにより観客の皆さんに感情的な部分をよりよく伝えられる、より現実に近いもの、感情をより伝えることに重きを置きました。
彼はPTSDを抱える人間として起用しましたが、撮影で大変な思いもさせたので、撮影のPTSDと合わせて2重のPTSDを抱えています。でも、このあとも役者を続けていくそうで、主演も決まっているようです。

ウクライナ映画 アトランティス ヴァレンチン・ヴァシャノヴィチ監督 アンドリー・リマルーク

解説

未来を変えるために必要なことは?
戦地のウクライナから届いた『アトランティス』は、ただひたすらPTSDを抱える孤独な元兵士を描いている。戦地から戻ってきたのに、工場の仕事に馴染むことが出来ず、自ら命を絶つ同僚。それもリアルだと知り、現実の厳しさを思い知る。
途中、工場の親会社トップらしき人物が演説をするのだが、実現出来ないような未来を語ることやお金では解決出来ない未来の象徴として印象深い。
敵、味方関係なく死体を回収するボランティアを行う女性と出会い、やがて主人公のセルヒーも手伝っていく。それこそが未来を変えるために必要な事であり、ヴァシャノヴィチ監督の未来を変えたいという希望は彼らの「愛」に託されたような気がする。時間はかかるかもしれない、それでも未来は何も決まっていないのである。
ここ東京でTIFFに関わる私たちが出来ること、それは本作を上映すること、記事にして伝えること、そして本作を鑑賞することなのではないだろうか。
ウクライナでは今日も戦没者の墓地が造られているのだから。

あらすじ

アトランティス

2025年、戦争直後の世界。深いトラウマを抱えた元兵士の男セルヒーは、身元不明の死体発掘に携わる女性カーチャと出会い、自らの過去と向き合う。果たしてセルヒーは戦争なしで生き、ありのままの自分を受け入れることができるだろうか?

第 32 回東京国際映画祭
■開催期間:2019 年 10 月 28 日(月)~11 月 5 日(火)
■チケット絶賛発売中!
■会場:六本木ヒルズ、EX シアター六本木(港区) 、東京ミッドタウン日比谷 日比谷ステップ広場(千代田区)
■公式サイト:www.tiff-jp.net

第 32 回東京国際映画祭
2019 年 10 月 28 日(月)~11 月 5 日(火)

©2019 TIFF

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