「日本アカデミー賞」の前に日本全国へ届けたい、新藤兼人賞受賞式からのメッセージ!

2019新藤兼人賞授賞式

「日本アカデミー賞」の前に日本全国へ届けたい、新藤兼人賞受賞式からのメッセージ!

『報知映画賞』『毎日映画コンクール』『ブルーリボン賞』そして明日3月6日(金)には『日本アカデミー賞』が開催されます。映画賞のスタートを切ったのが、昨年12月6日に開催された『新藤兼人賞』受賞式です。

2019年を代表する作品の一つとなった映画『新聞記者』の河村光庸プロデューサーがプロデューサー賞を受賞、新人監督に贈られる金賞、銀賞は『東京干潟』『蟹の惑星』の村上浩康監督、『メランコリック』の田中征爾監督がそれぞれ受賞しました。受賞者の喜びの声とともに、日本全国に届けたいメッセージ。それは、今回からPalabra株式会社によるUDCast賞が金賞受賞者に贈呈されたことに関連し、会場には視聴覚障害を持った方々も招待され、映画ログプラスの取材に応じていただきました。

第15回プロデューサー賞、映画『新聞記者』河村光庸プロデューサー!

河村光庸プロデューサー

2019新藤兼人賞授賞式

作っちゃいけない映画、禁断の映画をこのように評価していただいて大変光栄に思っています。
相当昔ですけど、新藤兼人監督の『裸の島』を観て物凄くビックリしまして、全く台詞がないんですけど、ものの見事に無言のまま何かに向かって反骨している。私は新藤監督を「反骨の人」だと思っています。

私はこの20年間、特に若い人のリスクマネジメント、コストパフォーマンス、それからコンプライアンス。この3つが会社で徹底的に教育されるわけです。リスクマネジメントでハイリスクを避ける、コンプライアンスは法令順守ですけど、法令を遵守することが何か見えない巨大な圧力を感じるような空気感が私は同調圧力と称していますけど、そしてコストパフォーマンスはモノの価値をお金で全て考えている。こうしたことによって社会全体が委縮され、非常に不寛容で、不自由な時代になりつつある。この映画を作ったきっかけもその新しい三種の神器に対して、コストパフォーマンスは良かったですけど、その他2つは徹底的に無視をした映画を作りたいと思っていました。まあ、同調圧力があったかと言えば、ないです!びっくりするほどなかったですが、しかもネットでも騒がれなかった。実は堂々と作り、発表して、大きくやっていけば(圧力は)ないんだと、何が幻影に怯えているような社会という風に実感を持ちました。

そういう事も含め、新藤兼人賞、プロデューサー賞をいただいたことは、反骨の人・新藤兼人さんの記念すべき賞で私は大変光栄に思っています。どうも有難うございます。

第24回新藤兼人賞金賞、『東京干潟』『蟹の惑星』の村上浩康監督!

村上浩康監督

2019新藤兼人賞授賞式

この度は、偉大な先輩の名を冠した名誉ある賞を受賞させていただい本当にありがとうございます。非常に光栄であると同時に身が引き締まる思いです。

この映画は基本的には私が一人で作りまして、一人で公開をしました。勿論、所々で色々な方のご協力をいただいています。色々な映画の形がありますが、僕はこの2つの映画は一人でなければ撮れなかった映画かなと思います。

『東京干潟』は多摩川に住んでいらっしゃるホームレスのおじいさんを取材した作品ですが、おじいさんのプライバシーに分け入っていくわけですが、その時に1対1で向き合ったからこそ心を開いてくれてここまで撮らせてくれました。半面、映画が出来て公開・興行に関しては限界があり、東京、横浜、大阪、名古屋で公開しましたが結果としては苦戦しまして、特に名古屋、大阪に行くと苦戦して映画館に申し訳なかったという気持ちもあります。

新藤兼人監督は偉大な映画監督、シナリオライター、映画プロデューサーなのですが、忘れてはいけないのは素晴らしいドキュメンタリーも撮っているのです。『ある映画監督の生涯』という新藤監督の師匠でもある溝口健二監督の記録映画ですけど、二十歳前後の時に観て凄くびっくりした記憶があります。というのは、その映画は溝口監督が亡くなられた後に、俳優さんやスタッフの方などゆかりの人たちにインタビューをしてその証言を綴った作品なので、溝口健二さんは画面に登場しないんです。ところが物凄く溝口健二さんの人間性とか映画観・芸術観が立ち上がってくるんです。僕はそれを観て、ドキュメンタリーってこんなことも出来るんだと印象深く驚いた記憶があります。その時はまさか自分がドキュメンタリーを撮るとは微塵も思っていなかったのですが、今考えるとこじつけのようですが、僕が将来進む道の種が撒かれていたのかもしれないと思います。

新藤監督はずっと独立プロで厳しい環境の中で制作を続けられていて、素晴らしいドキュメンタリーも撮っていて、なおかつ100歳まで映画を撮っていた。僕も新藤監督を目指すとはおこがましくて言えないのですが、100歳でドキュメンタリーを撮った人はいないと思うので、そこを目指して頑張っていきたいと思います。

※なお、今回から金賞受賞者にはPalabra株式会社によりUDCast賞が贈呈されます。受賞作品を、視聴覚障碍者をはじめより多くの観客に届けるために字幕や音声ガイドの制作、アプリUDCastに対応するものです。

第24回新藤兼人賞銀賞、『メランコリック』の田中征爾監督!

田中征爾監督

2019新藤兼人賞授賞式

『メランコリック』は銭湯で人が殺されていたという映画なのですが、その映画を作ろうというかアイデアはゼロベースでプロデューサーであり主演を務めた皆川君から声をかけてもらって、2017年の3月に準主演の磯崎君と男3人で映画を自分たちで作ろうということで始まりました。

2018年の10月に東京国際映画祭の日本映画スプラッシュ部門で初めて上映されて、今回に至るまで4、5回くらい「今日がスタートラインに立った気持ちです」と言っているんですけど、また今日言いたくなる感じです。やっと映画監督としてスタートラインに立てた気持ちです。多分、2作目撮った時も言うと思います。

この賞自体は去年からずっと「あの賞は憧れがあるんだよね」みたいなことを皆川君とかに漏らしていて、こうやって選ばれたこと自体びっくりしているんですけど、映画ファンの間では毎年「今年は豊作だった」と言っていると思うのですが、今年の8月に公開された関係で、今年公開された映画の動向を凄く観ていて、やっぱり今年は面白い映画が多かった年だったんだなと思っていて、新藤兼人賞のラインナップを見た時に名前が載っただけでも良かったと思えるくらい面白い作品が並んでいて、銀賞受賞のご連絡をいただいたときはびっくりしました。

今回が劇場公開作品は初めての作品なんですけど、かなり反省点もある映画ですし、2作目、3作目はさらに面白い作品を作っていきたいと思います。僕らがこの場に慣れていない証拠として、皆川君はびっくりするくらいの普段着で来ているのですが、これからも俳優をやっていくつもりなので後で声をかけてください(笑)。今日は本当に有難うございました。

2019新藤兼人賞授賞式


受賞者の皆さん、おめでとうございました!そして、ここからはPalabra社様のご紹介で、視覚障害を持つ方と聴覚障害を持つ方への取材をお届けします。

―――― UDCastが導入されたことで、映画に対しての距離は変わりましたか?

〇視覚障害を持つ男性Aさん
そうですね。そもそも音声ガイドがない時代が長く続きましたので、ガイドが付いたことにより我々視覚障害を持つ方が新たに趣味として、楽しみとして映画を楽しめるようになったことが一つです。加えて、音声ガイドは作品も限られていたものが、UDCastにより対応している映画館にスマホを持っていけば楽しめるようになり、時間と場所の壁が取り払われたことは本当に嬉しいことです。

―――― 障害のない方々に期待することはありますか?

〇Aさん
UDCastで鑑賞する方は、見えない方・見えにくい方、聞こえない方・聞こえにくい方に限定されるように思われるかもしれませんが、高齢の方で早い動きについていけない方や音が聞こえにくい方もいると思います。TVの解説放送を誰でも聞けるように、我々視覚障害のある方や聴覚障害のある方だけのものではないですから、色んな方に自由にアプリを使っていただき、違う形での映画の楽しみとして利用してもらえればいいと思います。

―――― UDCastの制作には監督が協力しているケースもあり、映画の様々な視点を知ることにも繋がりそうですよね。

〇Aさん
そうですね。音声ガイドなしで観ること、ガイドを聴きながら観ること、映像を切った状態でガイドだけ聴くこと。音声ガイドがあることで3つの楽しみ方が出来ます。

―――― 好きな映画や好きな役者さんを教えてください。

〇Aさん
色々ありますが、例えば生田斗真さんと瑛太さんが出演されている『友罪』は題材も題材ですし、かなりショッキングな映画で未だに印象に残っています。UDCastを作るためのモニター会で観た時も、完全にのめり込んでいました。(モニター会は)6時間とかかかるのですが、あっと言う間でした。
役者では瑛太さんですかね。『友罪』もそうですし、『ミックス。』もそうですし、固定されたものではなく演じる役によって作品に合わせてきっちり演技をされる印象があります。

―――― UDCastの作品が増えることを応援しています!

〇Aさん
障害を持つ方が映画館に行くことは勿論、スマホを持っていない方も多いので、スマホを持つきっかけにもなって欲しいですし、使えるようになって映画館へ行くきっかけにもなって欲しいです。本当に期待が出来る、広がって欲しいシステムだと思っています。

―――― 今日は映画業界の中でも制作者の方々が集まっています。制作者の皆さんに期待することはございますか?

〇視覚障害を持つ男性Bさん
作り方も色々とあると思いますが、映像が良くなってきたことによって台詞にして伝えなくてもよくなっていると思います。でも、言葉で伝えるということは凄く大きなことなので、必要ないと削った台詞もあるかもしれませんが、今一度言葉の大切さを考えていただきながら映画を作っていただければと思います。
UDCastも重要ですが、UDCastがなくても楽しめるようなものを期待したいです。古い映画はわざわざ言わなくてもいいことを台詞で言っていたりして、新しくなるに連れて言葉が凄く少なくなってきたように感じます。もしくは、サウンドエフェクトをあまり使わずにBGMだけで、後ろで何をやっているか分からない作品も増えてきている気がします。そうすると尚更、UDCastがないと理解出来ない映画が増えているので、UDCastがなくても理解出来るのが1番ですし、それは我々に限らずどんな観客に対しても通じるものだと思います。

―――― 元々、海外の作品は字幕があるのでご覧になっていたのでしょうか?

〇聴覚障害を持つ女性
観られます。
ただし、音が全て字幕化されているわけではありません。なので、音楽とかどんな生活音が聞こえるとか、効果音があるとかは分からず、台詞だけが出ているだけです。そういう意味では本来の映画を楽しむことが出来ないのです。
私が子供の時に父親は寅さんが好きでそれを覚えているのですが、中学高校で耳が聞こえなくなり、日本映画は字幕もないので観られなくなりとても寂しくなりました。海外の作品は監督も俳優さんも詳しいのに、日本映画はほとんど分からない。同じ日本人なのに映画が楽しめないことがとても残念でした。
日本のコマーシャルは字幕がないじゃないですか。1%以下だと思います。でもアメリカとかではコマーシャルにもほとんど字幕が付いています。日本の大企業のコマーシャルも海外で初めて内容を理解したケースもあります。
今回、UDCastがこの受賞に加わることで、聞こえない人がいること、字幕が必要な人がいることを知っていただくきっかけになるので、大きな意味があると思います。

Palabra社ご担当の方
配給会社の方も観客の声として要望していただくと対応を進め易いのだと思います。徐々に字幕の必要性などは浸透してきていて、何か要望をしていただくとそれに対して対応を検討してくださるケースも増えています。それらの対応が当たり前になる環境を目指していきたいと思います。

―――― 制作側には広がりつつあり、一般観客の方に認知していただきたいことなどはございますか?

〇聴覚障害を持つ女性
字幕付きや音声ガイドを使うためには、スマホを使ったり字幕の眼鏡をかけたりします。ちょっとゴソゴソ準備をしたりするので、その際には「きっと字幕付きで観るのだな」と温かく見守っていただきたいです。「なんで上映中にスマホを観ているの?」と言われてしまうケースもあるようで、知らないからそういうことになってしまうので、字幕が必要な方がいることやそういう方も一緒に楽しみたいんだと、それを理解し合える社会になればいいと思います。
もしかしたら、見える方・聞こえる方も、いつか見えなくなったり聞こえなくなったりするかもしれません。そういう事も含めて温かく見守っていただきたいです。

―――― 最近観た映画を教えてください。

〇聴覚障害を持つ女性
福山雅治さんの『マチネの終わりに』を観ました。福山さんは元々好きなので、でも今までは観られなかったんです。やっと観ることが出来て感激しました。
あと、私には息子がいるのですが、幼い頃は一緒にドラえもん映画とかを観られませんでした。アニメは字幕がないので。先日『記憶にございません!』を字幕用の眼鏡をかけて、息子と一緒に観ました。今は成人したのですが、やっと息子と一緒に映画を観るという夢が叶いました。

―――― 最後に日本で活躍されている多くの役者の皆さんに期待することをお聞かせください!

〇聴覚障害を持つ女性
出演者の方にはすべての人に作品を届けたいという想いを持って、字幕を付けたり、UDCastに対応することを自ら希望していただきたいです。「対応しないなら出演しません!」というくらい(笑)。色んな方に観ていただくために作っていると思いますので。例えば、舞台挨拶などでも出演者の方から対応していることを触れていただければ認知度が広がると思います。

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