第3回【石川県金沢市】美術館で映画上映 金沢に才能あるクリエイターを集めたい

『TAKAYUKI YAMADA DOCUMENTARY「No Pain, No Gain」』上映

and pictures地方上映特集
【連載第3回】
美術館で映画上映 金沢に才能あるクリエイターを集めたい

『TAKAYUKI YAMADA DOCUMENTARY「No Pain, No Gain」』上映

文:八田真(株式会社ノーワーク)

2019年7月、8月に山田孝之さんのドキュメンタリー映画『TAKAYUKI YAMADA DOCUMENTARY「No Pain, No Gain」』の上映会を開催し、多くの方にご来場いただきました。
映画上映は自社事業との関連性は低いですが、自分たちが興味のある面白そうなことにチャレンジしていきたいという想いを大切に行動しています。

金沢は文化的な都市のイメージが強い一方、人口や市場などキャパシティの規模も関係があり、才能がある方々、特に個人の方々が表現をする場所がまだまだ少ないと感じています。そんな中、北陸新幹線開通後に多くのクリエイターの方が移住してきている背景があり、金沢で芸術を表現したいという方々がさらに集まるきっかけになればと思っています。今後は自身でそういった場所をつくることも目標にしています。その流れで、才能あるクリエイターの方々の空気に少しでも多く触れていきたいです。

会場料と上映料を支払いながら自力で集客している上映会スタイルでは、利益創出が極めて難しく、赤字は覚悟の上で開催していますが、将来的な目標に繋げるための投資と考えています。

八田真(株式会社ノーワーク)

『TAKAYUKI YAMADA DOCUMENTARY「No Pain, No Gain」』上映

映画を好きになるきっかけになったはじめての自主上映

映画鑑賞は人並み以下、ましてやストリーミング配信やテレビもほぼ観ない。本業は映画や映像とはまったく関連無し。そんな人間が上映会を開催することになった。

2019年に『TAKAYUKI YAMADA DOCUMENTARY「No Pain, No Gain」』『メランコリック』『デイアンドナイト』と3作品の上映会を主催してみた中で、SNSを通していろんなメッセージをいただいた。
その中で、自分でも上映会を企画してみたい、どうやって開催したのか、という問い合わせを何通もいただいた。素人が上映会を開催した情報はあまり聞かず希少性を感じたので、今後上映会を主催する方への参考情報として少しでもお手伝いできればと思い書いてみます。

にわかファンだからできた無遠慮

すべてきっかけは2019年5月14日、インスタのタイムラインに上がったWonderwall 片山正道さんの投稿。いつも片山さんの幅広い交友関係や枠にとらわれない活動に刺激をもらっていて、その日の投稿はこんな内容。

instigator ( 武蔵美在学生に向けた特別講義) 次回ゲスト 山田孝之さんに、2045日間密着したドキュメンタリー映画 “ No pain, No Gain ” を観て来た。映画タイトル“ 痛みがなければ得るものなし”という内容そのもので、記録された内容は山田さんの生々しい苦労の連続。華やかなその裏でこんなに凄まじい現実があるなんて・・・ 皆さまこの映画オススメします。instigatorで聞いてみたい事が溢れ出して来ました。山田さんどうぞよろしくお願いします。 @ 新宿シネマカリテ

(インテリアデザイナー 片山正通氏インスタグラム より引用)

『TAKAYUKI YAMADA DOCUMENTARY「No Pain, No Gain」』上映

『勇者ヨシヒコ』だけはしっかり観たことのある、という程度の「山田孝之ビギナー」の自分。生々しい苦悩の連続をドキュメンタリー映像化した、というギャップワードに惹かれてしまったのは、ヨシヒコ作品をただ楽しんで観ていた自分には想像し難い。即座に『No Pain, No Gain』のトレーラーをグーグル検索、それを観た後に自分の気持ちが高まっていることを再確認した。

ちょうど仕事で都内に来ていたというタイミングもあり、この高まった気持ちのまま鑑賞しようと上映時間を調べたところ、どうやら時間の都合が合わない。それならばと劇場情報を調べたところ、なんと新宿シネマカリテ限定の単館上映作品だった。劇場では観るのは難しいな、という落胆が一瞬、それが瞬時に根拠の無い希望に変わった。

「今は金沢だけで観れます。はい、自分たちで主催してます」と言ってみたい。

後々この言葉をきっかけに、地元の方々や山田孝之ファンの方々から応援やお手伝いをしていただくことになる。自分はもちろん観たいし、なんなら自分に関わる人たちにも観てもらいたい!そんな欲求が行動の原動力になった。

そうと決まれば、スマホで関連会社を調べて即座に上映依頼の連絡。実績の無いどこの誰だかわからない、映画に造詣も文脈も無い人間に上映させてくれるのだろうか、連絡をしながら不安がよぎった。
開催地になる地元金沢の地の利を活かした金沢21世紀美術館での開催と、熱量としつこさでカバーするという根拠の無い自信がそれを解消するための気休めだった。

返事が来るまでそう時間はかからなかった。あらゆる連絡送信の中から、テレビマンユニオンに送ったFAXがSDPの田代蔦プロデューサーの手元に届き、連絡が入った。翌日お会いすることが電話で決まり、その時点で根拠の無い自信は、イケる!という自分勝手な確信に変わっていた。

恵比寿で田代Pとの挨拶を交わし、金沢での上映会について話した後会社に掛け合っていただき、後日上映OKの連絡が入った。

映画館を追い詰める集客というハードル

映画館が全国に7,457館あった1960年。

この60年の間にミニシアターなどは次々に閉館し、映画館の数は大きく減少した。相反してスクリーン数はここ数年増えていて2019年12月時点で3,583 館で、うち約88%がシネコンなのだが。片や、Netflixの2020年3月末時点の世界の有料会員数は1億8285万人を突破し、直近3ヵ月でも1,576万人増加している。配信というマーケットを活かせば作品を発信できる時代が到来しており、今後ますます映画館は消えていく傾向なのかもしれない。
(劇場数・スクリーン数は一般社団日本映画製作者連盟HP、Netflix会員数はNetflix社投資家向け情報をそれぞれ参照)

ちなみに僕たちは金沢21世紀美術館のシアター21という施設での開催だったため、非劇場上映というカテゴリになる。

『TAKAYUKI YAMADA DOCUMENTARY「No Pain, No Gain」』上映

開催にあたって一番のハードルは集客だった。

平日夜間に飛び飛び日程しか空いておらず、とりあえず5日間抑えた。
まずはインスタ広告で発信。フォロワー0からスタートしたことも相まってか、当初まったくと言っていいほどチケットは売れなかった。確かに2週間前に映画のチケットを買う行為は自分だったら絶対しないな、と普通に考えたら誰でもわかることだった。ましてや、インスタ経由でのアプローチはスマホで映画を観るのに慣れた層向けなので、2,000円+駐車場代を払って2時間滞在してもらうことは一筋縄ではいかない。

そしてまずここで気付いた大きな壁は、自分たちのハッシュタグに”映画”というワードが無く、そのコミュニティをまったく持っていないことだった。そこで、視点を少しずらしてインスタ広告と並行して手売りを行い、人を介してのコミュニケーションを強化することに注力してみることにした。

商圏を北陸三県に限定し以下のアプローチ。

・大学、専門学校へポスターとフライヤー設置:7校OK
・地元メディア関係(SNS、TV、ラジオ、新聞など)に告知:5社OK
・ショップ、飲食店にフライヤー設置:約50店OK

学校や企業のアカウントを探し当てSNS経由、メール、FAX、電話といったあらゆる連絡方法を駆使した。ショップや飲食店に関しては、まず自分たちが客として積極的にサービスを受けた。その流れで告知してもらうという作戦。その出費は大きかったが、楽しい時間を過ごした上に設置していただき、ついでにお客さまへのお声がけもしていただき、運営の大きな励みになった。

『TAKAYUKI YAMADA DOCUMENTARY「No Pain, No Gain」』上映

それでもまだまだ5日間の会場が埋まっていない。最終兵器として、山田孝之さんの来場を打診。
結果、スケジュール的に山田さんは来れなかったのだが、なんと牧有太監督に来ていただけることになり、映画鑑賞に付随した体験コンテンツとして集客アプローチに力が入った。それが功を奏してなのか、上映日が近づくにつれて、チケット販売数が急速に動き出した。

運営は基本実験思考で

チケット販売の伸びと反比例してよぎった不安は、1〜2人で事足りると踏んでいた上映スタッフ数だ。
Blu-rayとTシャツの販売、チケット受付、搬入撤収、上映照明担当を合わせて各上映会で4人はいてほしいところ。苦肉の策でSNS募集したのは上映券付きのボランティアスタッフ。これが意外にも好反応で、すぐに5日間の募集定員数が埋まった。

ご参加いただいた皆さまその節は本当にありがとうございました!

『TAKAYUKI YAMADA DOCUMENTARY「No Pain, No Gain」』上映

2019年7月に開催した上映会は、結果多くのお客さまにご来場いただき、牧有太監督の舞台挨拶も大いに盛り上がる。

このままきれいに終了すればよかったのだが、もうひと実験したいという欲望に駆られた。それは、ボランティアスタッフ参加者とのコミュニケーションと、上映会の打ち上げで牧監督とのお話がめちゃくちゃ楽しかったことが発端に。これ一緒にやったらもっとおもしろいし盛り上がるんじゃないか!

打ち上げの席で追加上映と牧監督の再来場を勢いで依頼。
後日正式にOKをもらって、8月に2回追加上映をすることになった。

『TAKAYUKI YAMADA DOCUMENTARY「No Pain, No Gain」』上映

8月の追加上映では山田孝之さん直々の動画メッセージをいただき、遠隔で大いに盛り上げていただきました。あえてSNSだけで募集したオフ会には総勢25名がご参加。

県外からのご参加や、映画にはまったく興味はないが、ただただ面白そうだから参加したという統一性のない集まりになりました。

途中に映画館の先行き暗い内容を書きましたが、ひとつの分水嶺なのだとポジティブに受け止めています。

配信では無く映画館で観るための作品を生み出す作り手もいるし、行く意味や価値を生み出す映画館もいます。その時映画館はもしかして映画館じゃなくて、アップデートを超えた変化をして価値を作り出しているかもしれません。

そういった進化する未来を考えながら、また映画に携われたらと思います。

『TAKAYUKI YAMADA DOCUMENTARY「No Pain, No Gain」』上映


映画『TAKAYUKI YAMADA DOCUMENTARY「No Pain, No Gain」』

節目の30歳を迎えた2013年〜2019年まで、激動の5年=2045日に完全密着!

山田孝之が30歳を迎えた2013年から直近の2019年まで約5年間=2045日の長期に渡って、所属事務所スターダストのグループ会社SDPが主導となり完全密着。
人生の節目を迎えた一人の男が、信念の元に絶えず挑戦を続け、懸命に生き、苦悩を繰り返しながら「人生を楽しもう」と必死にもがく、実直な山田孝之の姿が収められている。彼は一体、何を考え、感じ、どんな未来をみていたのか。山田孝之の5年間の全記録とともに、本心が垣間見えてくる。

出演:山田孝之 監督・撮影・編集:牧 有太
制作:テレビマンユニオン 企画・制作・配給:S・D・P
©2019・SDP/NPNG


■株式会社 and pictures

短編オムニバス企画「Short Trial Project」シリーズや長編映画を製作。

市原隼人主演『ホテルコパン』(16)、松雪泰子主演『古都』(16)、真野恵里菜主演『青の帰り道』(18)、三浦貴大主演『栞』(18)、阿部進之介主演『デイアンドナイト』(19)、池内博之主演『逃亡料理人ワタナベ』(19)ほか。公開待機作に三吉彩花主演『Daughters』(20)、大橋裕之原作/竹中直人・山田孝之・斎藤工監督『ゾッキ』ほか(21)。

映画製作をきっかけとした地域活性化プロジェクトの推進、俳優向けの演技ワークショップやプラットフォーム開発で映画産業の発展を目指す。

and pictures地方上映特集とは

「地域上映」は、劇場のない地域では公民館や学校で上映するなど、土地土地の目的や事情による多様なスタイルで行われてきました。その結果、地域にコミュニケーションを生み、人々を活気付けてきました。(省略)映画製作会社and picturesはこの連載を通して、上天草・新潟・金沢・鳥取といった4地域の上映を振り返り、映画を様々な角度から見つめ、これからの、映画を分かち合える場所を探していきます。

映画を分かち合える場所探して[and pictures地方上映特集 全5回連載]より

and pictures

https://andpictures.jp/

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