“イオマンテ”はアイヌの文化や精神世界の集大成

映画『アイヌモシㇼ』,画像

“イオマンテ”はアイヌの文化や精神世界の集大成
映画『アイヌモシㇼ』外国特派員協会記者会見レポート

10月8日(木)、映画『アイヌモシㇼ』監督・脚本をつとめた福永壮志監督が外国特派員協会記者会見に登壇しました。さらに出演者であり本作の指南役ともいえる、アイヌ出身の秋辺デボ氏もオンラインで参加しました。

トライベッカ映画祭国際 コンペティション部門 審査員特別賞を受賞し、先日グアナファト国際映画祭 長編作品部門最優秀作品賞の受賞ニュースが飛び込んだ話題作『アイヌモシㇼ 』は、前作『リベリアの白い血』が国内外で高く評価された、新鋭・福永壮志監督が5年をかけて作り上げた作品。

映画『アイヌモシ』グアナファト国際映画祭 最優秀作品賞受賞!

北海道阿寒湖・アイヌコタンを舞台に少年の成長を通して現代のアイヌ民族のリアルな姿を瑞々しく描き、地球に生きる私たちが生きていく中で本来大切なことや、命の尊さを考えさせてくれる傑作です。さらに、アイヌの血を引く下倉幹人が主人公・カント役を演じ、アイデンティティーにゆれる等身大の役どころを見事に演じきっています。

本作上映後に行われた記者会見で、長年行われていない熊送りの儀式“イオマンテ”の復活について賛成派・反対派が議論をする印象的なシーンについて、非常にセンシティブな問題だと思うがどのように取り組んだのか質問を受けた福永監督は「まず、阿寒で最後に儀式が行われたのは1975年でした。“イオマンテ”を描くかどうかは凄く悩みました。色んな方々の話を聞いて、デボさんをはじめまだ復活させたいと思っている方がいるし、反対の人もいる。それぞれ色々な理由があるわけです。勿論、繊細なことではあるのですが、“イオマンテ”はアイヌの文化や精神世界の集大成であり、そこまで色んなものを含んだものは他にはなかったので、映画の中で描くことによって、それを通して現代を生きるアイヌの皆さんの様々な考え方や想いを描くことが出来ると思いました。会議のシーンで賛成派は本当に賛成している方、反対派は本当に反対派の方です」と、本作で“イオマンテ”を描いた意図を明かしてくれました。

映画『アイヌモシㇼ』,画像

するとデボ氏は儀式について「映画の中で村の議論がありました。参加者はみな本音で話していました。あれは台本や台詞がありませんでした。そのままでてきた意見を聴いて、私はこれほど“イオマンテ”をやるということに反対する人が多いのだということにビックリしました。私は賛成派だったのですが、実は10年ほど前に子熊を飼っていました。それは“イオマンテ”をするためだったのですが、賛成してくれる人が一人もいなくて妻にも反対されて諦めました。伝統、そしてそれを文化という言葉で表現した場合、生き物を殺すということの人としての重さ、生命に対する人々の関心の深さ、大切に思う心、こういったことを逆に反対する人から強く感じました。なので、伝統文化を復活させることが全て正義だとは簡単には言えないのだという風にこの映画の撮影を通じて、本当に心から感じました」と、映画を通じた自身の感情の変化を打ち明けてくれました。

本作のキャッチコピーには主人公カントについて「少年は、世界に触れた。」とあるのですが、デボ氏にとっても映画を通じて新たな世界との触れ合いがあったのかもしれません。そして、それは本作を鑑賞する私たちにとっても人間として大切なことと改めて向き合うきっかけになるのかもしれません。

この日は、海外メディアから称賛の声とともに熱心な質問が寄せられ、国内にとどまらず海外からも本作に高い関心が集まっていることが存分に感じられる会見となりました。

映画『アイヌモシㇼ』,画像

映画『アイヌモシㇼ』は、10月17日(土)より渋谷ユーロスペースほか全国順次公開です。


福永壮志(監督・脚本)プロフィール

北海道出身。2003 年に渡米、映像制作を学ぶ。ニューヨークを拠点に活動後、2019 年に東京に拠点を移す。初⻑編映画『リベリアの白い血』(原題:Out of My Hand)は、2015 年にベルリン国際映画祭のパノラマ部門に正式出品され、ロサンゼルス映画祭メインコンペティション部門で最優秀作品賞を受賞、サンディエゴ・アジアン・アメリカン映画祭で新人監督賞を受賞する。その後同作は、2016年にアメリカで、2017年に日本で劇場公開された。

⻑編映画二作目となる本作は、カンヌ国際映画祭主催のシネフォンデダシオン・レジデンス、NHK サンエダンス脚本ワークショップ、イスラエルのサム・スピーゲル国際フィルムラボに選出された。

アメリカの The Gersh Agency と、イギリスの 42 Management and Production に監督/脚本家として所属。

秋辺デボ(キャスト)プロフィール

1960 年北海道阿寒湖温泉に生まれる。民芸店を経営しながら阿寒アイヌ工芸協同組合専務理事に就任。 木彫、講演活動、観光などを通じて、アイヌ文化の普及に務めている。さらには、ユーカラ劇脚本・演出家、ロックバンドの歌手、アイヌ舞踏家、アイヌ文化に関しての執筆、高校「アイヌ学」臨時教員、映画『許されざる者』 (13 年/李相日監督)には俳優として出演。枠に囚われることなくマルチな才能を発揮する。

映画『アイヌモシㇼ』予告動画

出演キャスト

下倉幹人
秋辺デボ
下倉絵美

三浦透子
リリー・フランキー

監督・脚本

福永壮志

プロデューサー

エリック・ニアリ
三宅はるえ

配給・宣伝:太秦

2020 年/日本・アメリカ・中国/84 分/カラー/ビスタ/5.1ch
HP:ainumosir-movie.jp

(C)AINU MOSIR LLC/Booster Project

映画『アイヌモシリ』

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