乙武洋匡氏登壇!『37 seconds』上映!オンライン映画祭「True Colors Film Festival」イベント【前編】

乙武洋匡氏登壇!
『37 seconds』上映!
オンライン映画祭「True Colors Film Festival」イベント【前編】
12月3日(木)「国際障害者デー」に、オンライン映画祭「True Colors Film Festival」開催記念発表会が東京都内で実施され、True Colors Festival アンバサダー乙武洋匡氏、オープニング作品に選出された映画『37 seconds』 HIKARI 監督(オンライン登壇)、同作品の主演を務めた脳性麻痺の女優・佳山明さんが登壇しました。さらに、フォトセッションとアフタートークでは、同作品に出演した俳優・大東駿介さんも参加し、トークを繰り広げました。

佳山明さん(左)と乙武洋匡氏(右)
―――― 日本財団では事前に「コロナ禍における障害者・健常者の意識調査」を実施。約6割がライフスタイルや価値観が変化したと回答し、在宅勤務について特に視覚や聴覚に障害のある方は、健常者よりも在宅勤務を辛いと感じていることが分かりました。コロナ禍において、ライフスタイルや価値観の変化はありましたか?
佳山明さん
お一人お一人が大変な局面も沢山ある中だと思うのですけれど、人と人との関りが変化していますので、私自身様々な人と関わることが日常から必須であるがゆえに、このコロナ禍の難しさを感じました。
今回の調査結果から考えまして、コミュニケーションをとることが難しい、それによって困難を極めているのかなと思います。
乙武洋匡氏
正直この結果には驚きました。
やはり障害者は移動に困難を抱えている方が多いので、移動しなくて済むようになったということはプラスの側面が大きいという予想がありました。蓋を開けてみたら、障害者の方の方がより困難を感じるようになったというのは驚きでした。
ただ、そこに多くの学びが詰まっていて、私が障害者として想定しているのは車椅子の人達であるし、実際にお話を聞いていたのも車椅子の方々だったので、主に視覚や聴覚に障害を抱える方とは普段接することがなかったですし、私自身が車椅子ベースで考えていたことを反省させられました。
調査結果を見ていただくと障害のある方と健常者の方で大きく違いますし、障害の種類によっても皆さんの意見が変わってきます。例えば、佳山さんも人との接し方が変化したとおっしゃっていましたが、『37 seconds 』の中で佳山さん演じるユマがお母さんにずっと介護、介助をされていますが、家族のケースもあればヘルパーさんに介助されているケースも多いんです。
その中で、この1年弱の間ずっと「濃厚接触をさけてください」と口を酸っぱくして言われ続けてきましたが、我々は濃厚接触を避けたら生活が成り立たないんです。勿論、感染症の拡大を防ぐという常識に立ち返れば接触を避けるのは当たり前のことなんですけど、僕らの生活では避けられない。だから、「接触を避けてください」と言われる度に普段サポートしてくれる方に申し訳ない気持ちになってしまいますし、ただでさえ難しい時期により精神的負荷がかかってしまった方が多かったのではないかと思っています。
何を困難だと思うのか思わないのか、また何を快適だと思うのか不快だと思うのか、これは障害の有無に関わらず、一人一人が感じ方って違うんだなぁということが今回の調査で浮き彫りになったので、コロナに関わらず普段の生活の全てのことが人によって感じ方が違うんだという当たり前のことに立ち返らないといけないと勉強させられました。
―――― 障害者、健常者にとってのコロナ禍における、これも“コロナ禍における”が曲者かもしれませんが、オンライン映画祭やエンタメの役割についてはいかがですか?
佳山明さん
ステイホームが標準化するなかで家にいる時間が増えました。様々な形で困難もある中で、動画配信サービスの芸術鑑賞の機会が沢山あり、普段からありましたが沢山映像を観ました。このような状況だからこそ、芸術の癒しの力、パワーに私自身助けられました。
乙武洋匡さん
今日の会場にも健常者の方が多いと思いますが、ライブハウスや劇場のバリアフリーはいかがでしたか?って考えるとそうでもないですよね?特に小さければ小さいほど、車椅子ではなかなか難しいんです。
つまり、コロナ前でも障害者は芸術に触れられる機会、コンテンツを生で楽しめる機会が制限されていました。ところが、健常者の皆さんも含めてみんなが生で触れられる機会が制限され、ようやくオンライン配信がメジャーになり、家で楽しめる作品が増えてきました。
これは非常に有難くて、コロナによる数少ないプラスの影響の一つかなと思っています。今後コロナが収束して生で楽しめるようになったとしても、そこに戻れない人がいることを忘れずにいただき、是非、オンライン配信がオプションとして残っていくようにお願いしたいです。
もう一つ、10月末に4作目の小説を出版しました。トランスジェンダーの主人公が家族を持とうとした時に、どんなハードルがあるのかの苦悩を描いているのですが、実は友人の当事者からの持ち込み企画でした。「ある程度LGBTQにアンテナを張っている人達に届けられた自負がある。そこからさらに輪を広めていくためには、エンタメの力が必要なんです」と言われて小説にしました。当事者が真面目にメッセージを出すのも大事なんですが、エンタメにしてメッセージを届けていくというのは重要だと思っています。
『37 seconds』も作品として非常に面白いんです。そして、“あー、面白かった”というあとにちゃんとメッセージが届いている作品です。今回は、そのようなダイバーシティ×エンタメの良質な作品が揃っているので、是非オンライン映画祭を楽しんでもらいたいです。
―――― ここで、オンラインのHIKARI監督と繋がりました。この作品が公開され、コロナがありましたが、今の想いをお聞かせください。
HIKARI監督
オンラインなので世界中の方々にオープニングに参加してもらえるのは、一つの縁かなとポジティブに考えるようにしています。
この作品は長く時間がかかって、皆さんの温かい愛とサポートで出来た作品です。この作品が、初長編映画、女性監督、主人公は初演技で体に障害を持っているということで、門前払いというか参加しにくいと伝えられたことがいっぱいあったんです。でも、作品を信じて、明ちゃんを信じて、参加してくださった方々みんなで頑張った結果、沢山の方に観ていただけるのはご縁だなって思います。
色んな想いが沢山ある中、私が学んだのは“自分を信じる”。それがこの映画を通じて沢山の方々に届いたらなと思います。今日は沢山に方にご覧いただいて、ポジティブなメッセージを持って帰っていただけたらと思います。

フォトセッションに登場した大東駿介さん
上映後のアフタートークの模様は後編に続く!
「True Colors Film Festival」は、“One World One Family(世界は一つの家族)”をテーマに、本日 12 月 3 日(木)~12月 12 日(土)の 10 日間にわたって開催。障害、女性のエンパワーメント、アイデンティティ、貧困と逆境、人種差別などダイバーシティ&インクルージョンのさまざまな課題を扱った作品をオンラインで楽しめます。詳しくは、公式ホームページから!
コメント