中国映画市場の“規制”と中国アニメの現在点『DAHUFA』トークイベントレポート

DAHUFA -守護者と謎の豆人間-,画像

『DAHUFA -守護者と謎の豆人間-』
特別先行試写会トークイベントレポート

中国史上初の年齢制限付のアニメとして注目を集め、過激な暴力描写で熱狂的な支持を得たバイオレンスアニメ映画DAHUFA -守護者と謎の豆人間-が、7月23日(金祝)~池袋HUMAX シネマズほか全国順次公開となります。

公開を直前に控えた7月20日(火)に、特別先行試写会トークイベントが開催され、映画ジャーナリストで上海国際映画祭プログラミング・アドバイザーの徐昊辰さんと、映画評論家の森直人さんが登壇。中国の映画人にとって宿命でもある“規制”との闘いや、中国国内でも着実にヒット作が誕生している“中国アニメの現在点”を語りました。

徐昊辰さん(以下、さん)
アニメは子供向けというのが今もかなり根強いのですが、『西遊記 ヒーロー・イズ・バック』(※)でだいぶ変わりました。
※2015年に中国制作アニメ歴代1位となる興収192億円の大ヒット!日本でも2018年1月から公開された。

DAHUFA -守護者と謎の豆人間-,画像

映画ジャーナリストで上海国際映画祭プログラミング・アドバイザーの徐昊辰氏

森直人さん(以下、さん)
あの作品はキッズムービー、ファミリームービーの体なので、どぎつい感じはないですよね?

さん
大人も楽しめますし、西遊記はみんなが知っている物語なので、口コミ効果で一気に広がって。ちょうど中国の映画市場が急成長している時期でもありました。

アニメーターやアニメの配給会社に希望を持たせた効果もあるから、それが今日の結果に繋がっていると思います。

さん
確かに『西遊記 ヒーロー・イズ・バック』の前の中国アニメはクラシックなものしか知らないくらいでした。本当に1年毎に状況が変わりますよね?(笑)

さん
変わります(笑)

クラシックのアニメは海外でも評価されていますが、その後に色々な事が起こってアニメの発展が止まっている時期もありました。私たち80年代、90年代生まれの世代はアニメ放送に対しての制限が今よりもない時代だから、聖闘士星矢北斗の拳スラムダンク名探偵コナンが普通に放送されている時期があったんです。それを観て育ったと言えるくらいの親近感があるから、日本アニメに対する憧れ、アニメ業界に入りたい人がそこから沢山出て、2010年代に成果が出て来た。当然、国の経済力が成長したこともあります。


さん
DAHUFA』も最初の方はいかにも山水画風のクラシックな作画で始まるんですけど、話が転がっていくうちにどんどんジャンプが出てくるんです(笑)日本の漫画アニメ、特にジャンプ系、ドラゴンボールの影響はかなりあるんじゃないかと。

DAHUFA -守護者と謎の豆人間-,画像

映画評論家の森直人氏

さん
キャラクターデザインも少し感じます(笑)

さん
勿論、宮崎駿監督のオマージュも感じました。

さん
今回、監督にメールインタビューをさせていただいて、元々はアニメーターではなく漫画家になりたかったそうです。でも、漫画家もほとんどなれない時代が続いているので、Adobe Flashを使ってアニメーションを投稿したりしていて、それをきっかけに本人もなぜかわからないけどアニメーターになっていたそうです。

さん
この作品は大人向けですが、年齢制限のレイティングがついたのは暴力描写だけじゃないような、風刺の部分も大きいんじゃないかな?(笑)

DAHUFA -守護者と謎の豆人間-,画像

さん
中国映画に規制はないけど、ルールも曖昧で、常に変わっているんです。どういう理由で上映できないかとなると「不適切」と書かれることが多いのですが、当時この作品が「自主規制」と発表されたのは色んな意味が入っているのではないかと個人的には思っています。

暴力に関しては、首を斬るのはあるけど血の色も赤じゃないし、緑とかですよね。アニメならではの表現をしているから、実写映画でさえ露骨な暴力シーンは流れているので、単純に暴力シーンだけで規制されたのではないと思っています。

逆に、監督を評価したいと思います。こういう作品を作るのはリスクがあります。上映出来ないと言われたら全ての投資が無駄になりますし、作品に込めたい気持ちを入れることも今は中国の監督は少なくなっているんです。婁燁(ロウ・イエ)監督は、敏感になるテーマや政治的なテーマ、エロいシーンも撮っている監督なんですけど、作品制作を禁止されたこともありました。今は、厳しい検閲があることで、作りたい作品を創るよりは検閲を通れる作品を作ることになっているから、不思凡監督がアニメでこの作品を作って凄く良かったと思います。

さん
中国の監督は上映禁止との闘いだと思うので、どの辺で闘うのかは作家性の強いクリエイターにとっては命題でもありますよね。そうなると、2017年に『DAHUFA』は通ったわけですけど、今でも通ると思いますか?

さん
今年なら厳しいかもしれません。実は、上海国際映画祭のプログラミングディレクターの繋がりで関係者と検閲について会話しましたけど、政府関係者は新しい作品や面白い作品を創ることに対してそこまで制限したくないという立場にはなっているんです。ただ、日本も同じ問題を抱えていると思いますが、どうしても世論から声が上がるんです。

つい先日日本で公開された『少年の君』はイジメの問題など敏感な社会問題があるので検閲は通りましたけど、それでも「上映したらどうなるか?」と心配されて、結局公開日決定の3日後に上映がスタートするということが起こりました。

司会:中国アニメーションの最近の潮流についてはいかがでしょうか?

さん
先ほど森さんからも紹介された『西遊記 ヒーロー・イズ・バック』をきっかけにアニメに対する抵抗感が弱くなっていて、大人も普通にアニメを観に行くようになりました。正直、『アナ雪』もそんなに興行収入はよくなかったんです。元々、ミュージカルの文化が浸透していないですし。

Netflixで配信中の『紅き大魚の伝説』もジブリ風と言われていますが、大ヒット。2019年がまさに転換点で、『ナタ~魔童降臨~』が中国国内で800億円くらいの興行収入を記録して、『白蛇:縁起』が70億円(日本は7/30公開)、去年日本で話題になった『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)』が50億円、2Dも3Dも色んなアニメが出て来たことで、アニメに対する好奇心が高まっていると思います。去年はもっといける感覚が多くの制作者にあったと思いますが、コロナがあったので今後どうなるのか様子を見ないと分からないですね。

さん
DAHUFA』の路線は続いているわけではない?

さん
続いて欲しいですけど、中々こういった作品が少ないですね。

さん
2019年が『西遊記 ヒーロー・イズ・バック』から続いた流れのピークポイントだとしたら、実写映画の『少年の君』も2019年ですよね。あれは岩井俊二監督の『リリイ・シュシュのすべて』の影響が凄くみられて、イジメとか受験戦争をハードに扱っている問題作。ある種、成長し続ける中国社会の軋みの部分を描いたものなので、管理する側からすれば有難くはないお話ではある。そことの闘い方ということですよね。となると、『少年の君』以降の実写映画も同じように難しい状況にあるということですか?

さん
じゃないかなと思います。コロナがあって、また乱世に入るかなと思うので、、、

さん
展開早いな~(笑)

さん
ちょっとだけ政府への批判的なメッセージ、あるいは批判ではないですけど一般の方からしてちょっと違うような作品が出てきてしまうと社会が混乱になっちゃう。それを防ぎたい政府の気持ちがあるから、中国の映画人はギリギリの闘いですよね。

この映画の中で特に監督のこだわりというか、独話のシーンが多いんです。常に自分と話している。その点に関して、中国国内では賛否両論出ていましたが、個人的には凄く好きで、この映画の中の世界だからこそ自分と自分の対話が出来た。

司会:最後にこれから本作をご覧になる方へメッセージをお願いします。

さん
フラットに観たので凄く楽しかったし、面白かったです。

僕も幼少期からアニメを摂取してきたわけですけど、どこまでその影響があるのかを意識しても面白い。例えば、ある惑星に降り立ったその世界の中で構造が段々と明かされていくという作りはちょっと「銀河鉄道999」っぽい感じもあって。あとは、DAHUFAの相棒みたいなタマがいるんですけど、ガンダムのハロみたいなんです。スゴイ、似ているんです(笑)そういうのも面白いし、色んな楽しみ方が出来ると思います。

後は、クオリティが本当に高いので、優秀なスタッフがいることが本当によく分かりますし、2017年にしか生まれなかった作品なので、それを今観て強度を確かめるのは重要だと思います。色々楽しめる良い映画だと思いました。


さん
私と同世代が日本のアニメに影響されて、私もこうして日本で仕事をして、他の人も日本のアニメを観てアニメーターになった方が沢山いるので、今、中国アニメの成果がどんどん出ている時期でもあります。昨年、『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)』はこんなに日本で反応が良くて、人気作品になって心の中から嬉しく思いました。中国のアニメーターがもっと日本の観客と出会って、感想を聞きたいという気持ちは私も凄く共感出来ます。この映画は観た人それぞれの感想が全然違う作品でもありますから、日本の皆さんの感想も楽しみにしています。

あらすじ

王宮から失踪した皇太子を捜すため、奕衛(イーウェイ)国の守護者であるダフファーは国境を越え、とある謎の村に辿り着いた。ここの住民は自らの意志を持たず、喋らず、見た目も皆そっくりで、村中には不気味な気配が漂っていた。やがてダフファ―は、この村に隠された秘密へと徐々に近づいていく…。

監督

不思凡

製作

光線彩条屋影業、好傳動画

配給:Atemo
公式HP:https://atemo.co.jp/dahufa.html
ⒸEnlight Pictures. ⒸFACEWHITE PICTURES.

7月23⽇(⾦祝) 池袋HUMAXシネマズほか全国順次公開

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