少年とオペラの出会い、夢のような時間を切り取った映画『母へ捧げる僕たちのアリア』

母へ捧げる僕たちのアリア,画像
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【音楽に注目!新作レビュー】
『母へ捧げる僕たちのアリア』

近年ヨーロッパの映画で多く取り上げられる移民や格差の問題を盛り込みながら、新鋭ヨアン・マンカ監督はその定形を絶妙にずらしていく。厳しい生活を送る4人兄弟の家庭で流れるのはヒップホップではなく、オペラだ。

『母へ捧げる僕たちのアリア』,画像

© 2021 – Single Man Productions – Ad Vitam – JM Films

主人公の少年ヌールはひょんなことから、介護をする母親が大好きなオペラを歌うきっかけを手に入れる。天賦の才能を見抜いた講師のサラは彼に歌い続けることを薦める。映画は兄弟が直面する八方塞がりの現実だけを強調するのではなく、ヌールとともに歌のレッスンをする少女たちの生き生きとした表情やビーチサッカーに興じる男たちの躍動など、海辺の街の夏休みとそこにある弛緩した空気を非現実的なほどオプティミスティックに捉える。

『母へ捧げる僕たちのアリア』,画像

© 2021 – Single Man Productions – Ad Vitam – JM Films

パヴァロッティ、マリア・カラス、そしてサラを演じるジュディット・シュムラが歌う「椿姫」、オペラの名曲が全編を彩ってはいるものの、マンカ監督はあえて「音楽映画」としてのカタルシスよりも、音楽の持つ力がヌールに与える影響、バラバラな性格を持つ4人の兄弟が心を通わせていく過程、そして少年の旅立ちに焦点を当てることを選んでいるように感じる。誰しも子供時代に過ごしたことがある夢のような時間を切り取った、清々しさを持つ作品だ。

文:駒井憲嗣

『母へ捧げる僕たちのアリア』予告編映像

あらすじ

南仏の海沿いの町の古ぼけた公営団地で、兄3人と暮らす14歳のヌール。重篤で昏睡状態の母を兄弟4人で自宅介護する生活は苦しく、まだ中学生ながら夏休みは兄の仕事の手伝いと家事に追われる毎日だ。そんなヌールの欠かせない日課は、毎夕、母の部屋の前までスピーカーを引っ張っていき、母が大好きなオペラを聴かせてあげること。そんなある日、教育矯正の一環で校内清掃中だったヌールは、そこで歌の夏期レッスンをしていた講師サラに呼び止められ、歌うことに魅せられていくのだが――。

出演

マエル・ルーアン=ブランドゥ、ジュディット・シュムラ、ダリ・ベンサーラ、ソフィアン・カーメ、モンセフ・ファルファー

監督・脚本

ヨアン・マンカ

2021年/フランス/フランス語/108分/カラー/ビスタサイズ/5.1chデジタル
原題:La Traviata Mes freres et moi
配給:ハーク
配給協力:FLIKK
後援:在日フランス大使館、アンスティチュ・フランセ日本
公式HP:hark3.com/aria
© 2021 – Single Man Productions – Ad Vitam – JM Films

6月24日(金)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次公開

 

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伝統的な価値観を壊すことを商売としたポストモダン(だった)国の映画。
この種の映画の価値観は、オペラを始めとした文化が素晴らしいものであるという価値観に支えられているはずだが、文化はそれを批判する者らがいうように幻なのか。

人は文化的人間なのか。非文化人は劣ったヒトなのか。

こういった映画に、ある種の権力を深読みしてしまうのは、ポストモダンの残滓に侵されているのかな。

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