
【音楽に注目!新作レビュー】
『ロックンロール・ハイスクール』
1979年に制作されるも日本では未公開、これまで特集上映のなかで上映されるのみだった幻のロック・ムービーが、遂にロードショー公開される。製作総指揮をとるのはB級映画の帝王と称されるロジャー・コーマン。彼の大ファンだったラモーンズが、数々のオファーを断り唯一出演を承諾した映画で、演奏シーンはもちろん(にわかに信じられないが)主人公の高校生に混ざりセリフも用意されている。

© 1979 New World Productions Inc. All Rights Reserved.
1980年代になるとジョン・ヒューズ監督をはじめとする学園ものに連なる高校を舞台にした音楽映画が多数登場するが、今作はその先駆けといえる、無軌道な若さと衝動が詰め込まれている。ラモーンズに熱狂する主人公の女子高生リフ・ランデルを演じるP.J.ソールズのチャーミングな魅力だけでなく、高校生の日常生活とフラストレーションが丁寧に描かれている点が、後半の学園爆破!のカタルシスを増幅させる。

© 1979 New World Productions Inc. All Rights Reserved.
実はサウンドトラックにはラモーンズのみならずポール・マッカートニーやベルベット・アンダーグラウンド、そして劇中にはローリング・ストーンズの『スティッキー・フィンガーズ』などのアルバム・ジャケットも登場し、70年代後半にロック・カルチャーがどのようにアメリカの若者に受け入れられていたかを知るのにも最適。ラモーンズといえばシンプルなスリーコードのパンクロックというイメージが強いが、ライブハウスだけでなく校内や街中でこれでもかと言わんばかりに爆音を鳴らしまくる今作を観ると、彼らの音楽性にあるメロディ・センスの秀逸さ、多くのティーンの夢を受け止める懐の深さにあらためて感嘆してしまう。
文:駒井憲嗣
『ロックンロール・ハイスクール』予告編映像
あらすじ
ヴィンス・ロンバルディ高校のロック全面禁止校長、ミス・トーガーは校内のダメ男2人、ヘンゼルとグレーテルを手下に、ロックの相対騒音度を測定、ロック系レコードを燃やして生徒を取り締まる巨漢だ。ロック大好きリフ・ランデルは執拗な妨害にもめげず音楽の授業で大好きなバンド、ラモーンズのために「ロックンロール・ハイスクール」を作詞、ライヴ会場でプレゼントすることに成功する。曲を受け取ったバンドは大喜び。世界初のパンク・ロック、ラモーンズはリフのため、ミス・トーガーを成敗するべく高校へ乗り込む!
キャスト
P・J・ソールズ、ヴィンセント・ヴァン・パタン、メアリー・ウォロノフ 、 ポール・バーテル、 クリント・ハワード、ディック・ミラー、デイ・ヤング、RAMONES
監督
アラン・アーカッシュ
製作総指揮
ロジャー・コーマン
1979年|アメリカ|93分|PG12|原題:ROCKʼNʼROLL HIGH SCHOOL
提供:キングレコード
配給:ビーズインターナショナル
公式HP:newworldpicturesmovie.jp
シネマート新宿にて9月23日(金)より公開
ほか全国順次公開
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