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今から60年以上前の1952年にジャック&ベティの前身・横浜名画座がオープン。当時の運営会社は、他にも‘横浜日劇’や‘千代田劇場’や‘関内アカデミー’なども運営するなど、この地域はまさに「映画の街」として親しまれてきました。今回は、街興しをきっかけにジャック&ベティに集ったことが縁で、今では支配人として街と人とを繋げることに日々奮闘している『横浜シネマ・ジャック&ベティ』梶原俊幸さんにお話しを伺いました。

〇この街が好きで映画の世界へ

劇場閉館の流れはここ横浜にも押し寄せ、当時、横浜日劇とジャック&ベティを運営していた会社が事業を清算し、2005年にジャック&ベティも閉館に追い込まれました。しかしながら、1991年に建て直しをしていたジャック&ベティは比較的設備が新しかったこともあり、他の企業にて再スタートします。私は2006年頃からこの地域の街興しに携わるようになり、映画も含めて街を元気にできないかと映画館を応援していました。仲間と一緒に街歩きを企画したり、劇場で交流会を開いたりしていました。しかし、再スタートした会社も、一度閉館した劇場のため、なかなか順調にはいかず、私たちに運営の後任としての声がかかりました。

運営当初を振り返って下さった『横浜シネマ・ジャック&ベティ』支配人の梶原俊幸さん

もちろん映画は好きでしたし、音楽や美術など文化芸術に幅広く興味がありましたが、ここで断ってしまえば数か月後閉館に追い込まれる可能性もあり「ここはどうなってしまうのだろう?」と、そう考えると私たちの選択肢は1つでした。2007年3月から正式に劇場運営を引受ることになりました。

〇横浜はいつまでも“映画の街”

最初の数年は、上映作品や特集企画などに色々と趣向を凝らしたのですが集客には苦労しました。同時に、同様の名画座系劇場の閉館やシネコンが大作中心の構成へシフトしていったことで、横浜の映画好きのお客様が行き場所を失っていたのも事実です。結局は、そういう方々が少しずつ当館に集まって下さるようになりました。そんな皆さんからすれば、30年くらい前は伊勢佐木モール周辺にはたくさんの劇場があり、横浜はいつまでも“映画の街”だと思っていたのに、ついにジャック&ベティも閉館してしまうのでは?となる訳ですよね。今ではお客様と触れ合う機会も増えて「老後楽しみにしていたから、ジャック&ベティが復活してくれて本当に良かった!」などのお言葉を頂戴したことは忘れられません。

〇故・若松孝二監督が教えてくれた心意気

劇場を運営して10年以上が経過しましたが、1番印象的な上映作品は故・若松孝二監督の『キャタピラー』(2010年)です。ちょうど今頃の2月に開催されるベルリン国際映画祭で主演の寺島しのぶさんが最優秀女優賞(銀熊賞)を受賞しました。通常、このように大きな賞を受賞した場合には、それなりに大きな映画会社が配給し、大きな劇場に流れていきます。しかし、若松監督は受賞後すぐに帰国して、全国の劇場に自ら電話で交渉を開始。「テレビ見たでしょ?『キャタピラー』上映するよね?」と当館にかかってきたあの電話は決して忘れられません(笑)。

実は、監督の前作品である『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』を当館で上映しておりました。そのご縁を監督自らが大切にして下さって「この作品はヒットするであろうから」と東京のテアトル新宿と同時公開でジャック&ベティを選んでくれたのです。そのお気持ちが本当に有難いですし、上映も異例の3カ月程度のロングラン。あの作品がなければ今でも劇場を続けてこれたかは分かりませんし、いまだにあの記録は塗り替えられていません。

初日の舞台挨拶で監督と寺島しのぶさんが来館し、会場に人が溢れるほど連日大盛況でした。実は、監督は東京の舞台挨拶を終えてから夕方に当館で舞台挨拶をしていただいたのですが、当時、当館の並びにあった中華料理屋(現在は移転)が大好きで、その店で初日の打上げをしたいから、わざわざ横浜でも舞台挨拶を組んで下さっていたという噂もあるほどです(笑)。不慮の事故で監督とはもうお会いすることが出来なくなってしまいとても残念ですが、次回作以降も舞台挨拶に訪れてくれていた若松監督の姿はいつまでも私の心の中に大切に生き続けています。

〇映画と映画館を繋ぐ「ジャックと豆の木」

2016年にジャック&ベティが25周年を迎え、その記念に「映画と映画館の本 ジャックと豆の木」の発行をスタートしました。最初の1年間は季刊誌として4号まで発行、現在は不定期発刊で5号まで発行しているのですが、実は当館を取り上げているのは創刊号(1号)のみなんです。当館の看板を製作してくださった小笠原正勝さんに企画・責任編集をお願いしています。小笠原さんは数多くの名作のポスターや看板を手掛けた偉大な映画人です。映画と映画館の間には配給、宣伝、制作など色々な映画人が携わっていますので、そこにスポットを当て、読み物として提供していくことに意義があると感じていて、実際に掘下げていくと本当に色々な発見があって面白いんです!他の劇場も積極的に取り上げていて、全国のミニシアターの文化を掘り返しながら同時に守っていく一助になればと考えています。賛同してくださる方も増えていて、地方の書店や劇場にも置いていただいています。


【次ページ】支配人からのメッセージ! >>


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